大規模災害では、携帯電話回線やインターネットが不安定になります。
電話はつながらない、LINEも遅延する──これは過去の大災害でも実際に起きた現象です。
その中で重要になるのが「複数の通信手段を持つこと」。
今回は、電話番号登録不要で利用できる、セキュリティ重視のプライベートSMSアプリを整理します。
■① なぜ“別の通信手段”が必要なのか
災害時に通信が止まる理由は主に3つです。
・回線の輻輳(アクセス集中)
・基地局の停電
・インフラ被害
被災地派遣(LO)で強く感じたのは、「家族と連絡が取れない」ことが最大の不安になるという現実でした。
防災の基本は“分散”。
通信も例外ではありません。
■② SimpleX|登録不要・ID発行型
SimpleXは、電話番号やメール登録不要で利用できるメッセージアプリです。
・自動発行IDで接続
・メッセージ自動削除設定
・Tor接続対応
・画像・音声・ビデオ通話対応
設計思想としては中央サーバー依存を避け、メタデータ最小化を目指しています。
ただし新興アプリのため、第三者による大規模な監査実績はまだ多くありません。理論設計上は高い匿名性を目指した構造ですが、今後の検証蓄積が重要です。
■③ Session|分散型ネットワーク型
SessionはSignalプロトコルを基にした派生系アプリです。
・電話番号不要
・分散型ネットワーク採用
・日本語対応
・最大100人グループ
過去にはPerfect Forward Secrecy(PFS)の実装に関する議論もありましたが、現在は改善が進んでいます。
設計思想は「検閲耐性」と「中央依存の回避」にあります。
リアルタイム性はやや劣る場合がありますが、災害時には“届く可能性がある”ことが重要です。
■④ bitchat|インターネット不要(BLE通信)
bitchatはBluetooth Low Energy(BLE)によるメッシュ通信を採用しています。
・インターネット不要
・近距離端末同士で通信
・メッシュネットワーク形成
・E2E暗号化対応
最大の特徴は「ネットがなくても使える」点。
ただし通信距離は数十メートル程度で、遮蔽物に弱いという物理的制限があります。
元消防職員として言えるのは、
完全オフライン通信は理論上強力ですが、距離制限と利用者数が鍵になります。
■⑤ 実用上の限界
どのアプリにも共通する制約があります。
・相手も同じアプリを導入している必要がある
・高齢者には操作難易度が高い
・BLE型は距離制限がある
・バッテリー消費に注意が必要
“理論上強い”と“現実で使える”は別問題です。
家族全員が使えなければ、実効性は下がります。
■⑥ セキュリティ議論について
セキュリティは「絶対安全」というものは存在しません。
・SessionはSignal派生で設計思想は成熟しているが、過去にPFS議論あり
・SimpleXは新興で監査例は少なめだが、理論設計は高度
・bitchatはBLE依存のため物理距離制約が大きい
重要なのは「自分の目的に合っているか」です。
■⑦ 今日できる最小行動
・1つインストールして触ってみる
・家族1人と接続テスト
・非常時連絡手段を二重化する
防災は“慣れ”が9割です。
■⑧ 通信も自律型防災の一部
自律型防災とは、
・自分で調べ
・自分で選び
・依存を減らすこと
通信も同じです。
1つのアプリに依存するのではなく、
バックアップを持つという発想が安心につながります。
■まとめ|通信は分散してこそ強い
SimpleX、Session、bitchat。
それぞれ設計思想が異なり、強みも制約もあります。
結論:
災害時は「通信の分散」が命綱。1つに依存せず、複数の連絡手段を持つことが壊れにくい備えです。
被災地で最も不安を生むのは「孤立」です。
通信の選択肢を持つことは、安心を持つことでもあります。
【出典】
SimpleX Chat 公式サイト:https://simplex.chat
Session 公式サイト:https://getsession.org
bitchat mesh 公式情報:https://github.com/jackdoe/bitchat


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