【防災士が解説】ラジオは“心の避難”になる。災害時に人の声が持つ本当の力

災害対策というと、水や食料、ライトやバッテリーが先に思い浮かびます。
しかし、被災地で本当に長く影響するのは「孤独」と「不安」です。

ラジオは、情報収集の道具であると同時に、“心を守る備え”にもなります。
今回は、防災の視点から「ラジオが心に効く理由」と、その具体的な使い方を解説します。


■① なぜラジオは孤独を和らげるのか

音楽よりも「人の話し声」のほうが、孤独感を軽減しやすいと言われています。
人の声には安心感をもたらす効果があり、特に夜間はその影響が大きくなります。

停電で暗い部屋に一人。
音もなく、情報もなく、時間だけが過ぎる状態は想像以上に心を消耗させます。
そんな時、誰かの声が流れているだけで、緊張が少し緩みます。


■② 一方通行でも「つながっている感覚」が生まれる

ラジオは基本的に一方通行のメディアです。
しかし、不思議と「誰かと同じ時間を共有している」という感覚が生まれます。

避難所での夜間、スマホの電池を節約しながら小さなラジオをつけている人がいました。
その方は「声があるだけで落ち着く」と話していました。

防災士として感じるのは、人は“完全な無音”に弱いということです。
音があるだけで、孤立感は和らぎます。


■③ 想像の余白が心を守る

テレビは映像で情報を埋め尽くします。
映像は強く、刺激も大きい。

一方、ラジオは音だけです。
想像の余白があり、心が疲れにくいのが特徴です。

災害報道が続く中、映像に触れ続けるとストレスは蓄積します。
ラジオは、情報を得ながらも感情を過度に揺さぶられにくい媒体です。


■④ 夜におすすめの使い方

夜間に活用する際は、次のような使い方がおすすめです。

・小さめ音量でつけっぱなし
・トーク番組中心にする
・タイマー機能を使う
・イヤホンは片耳だけ(安全確保のため)

片耳運用は、防犯や周囲の音を聞くためにも重要です。
これは避難所でも自宅避難でも共通します。


■⑤ 災害時の“心の備え”としての価値

停電で真っ暗な夜。
情報が入らない不安。
余震が続く時間。

被災地派遣で夜間待機に入った際、ラジオを流しているだけで隊員の緊張が少し和らぐ場面を何度も見ました。
情報以上に、「人の声」が空間を満たすことが大きいのです。

これは物資では代替できません。


■⑥ 防災士から見た実際に多かった失敗

実際に多いのは、「物の備えはあるが、心の備えがない」ことです。

水も食料もあるのに、孤独や不安で眠れない。
その結果、判断力が落ち、些細なことで衝突が起きる。

行政は物資支援を整えますが、“孤独のストレス”までは直接支えられません。
だからこそ、自分で整える備えが必要になります。


■⑦ 自律型避難と情報の質

自律型避難とは、自分で考え、動ける状態を保つことです。
そのためには、心が落ち着いていることが前提になります。

ラジオは情報を与えるだけでなく、心理的安定を支える道具でもあります。
落ち着いていれば、正しい判断がしやすくなります。


■⑧ 最小セットで十分に効果がある

必要なものは多くありません。

・小型ポケットラジオ1台
・乾電池予備2セット
・イヤホン

これだけで、孤独によるストレスは大きく軽減できます。
高価な機材は不要です。小さく、確実に使えるものを選びましょう。


■まとめ|ラジオは“情報”と“安心”を同時に守る道具

ラジオは古い道具ではありません。
災害時に「心を守る役割」まで果たす、静かな防災用品です。

結論:
ラジオは、防災だけでなく“心の避難”を支える重要な備えである。

防災士として現場を経験してきた立場から言えるのは、情報があり、声が流れているだけで人は落ち着きを取り戻せるということです。
物の備えに加えて、心を守る一台を持つこと。それが本当の備えになります。

出典:総務省「災害時における情報通信の確保に関する資料」

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