集合住宅で使われる「集中プロパンガス(集中LPガス)」は、建物一棟をまとめて供給する仕組みのため、災害時にはボンベ置き場そのものが弱点になることがある。
特に地震・強風・豪雨・土砂災害では、わずかな配置ミスや固定不足が重大事故につながる。
ここでは、集中プロパンのボンベ置き場で“住民が普段から確認すべき危険ポイント”を、防災の視点でわかりやすく解説する。
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■① 結論:ボンベ置き場は「固定・間隔・周囲環境」で安全性が決まる
集中プロパンのボンベは、一見しっかり並んでいるように見えても、
・固定チェーンが緩い
・サビによる腐食
・周囲の障害物が多い
・排水が悪い
こういった環境があるだけで、災害時のリスクが一気に上がる。
ボンベ1本は約50〜60kg。
倒れれば配管が折れ、ガス漏れ・火災へ直結する。
■② 地震時の“転倒リスク”
集中プロパンは複数ボンベを横並びに設置するため、
【横方向の揺れに弱い】という特性がある。
特に注意すべきポイントは次の3つ。
・チェーンが1段のみ
・固定金具の取り付けネジが緩い
・ボンベ下の地面が不安定(コンクリ割れ・砂利・傾き)
2段固定されていない古い集合住宅では、地震でボンベが“ domino倒れ ”するリスクが高い。
■③ 豪雨・台風で起きる“漂流リスク”
集中プロパンのボンベ置き場は、建物外周に作られることが多い。
そのため豪雨や台風時に次のようなトラブルが起きやすい。
・排水不良でボンベが水圧で動く
・台風の飛来物で固定金具が破損
・土砂と一緒にボンベが流される
特に“低い位置に置かれたボンベ置き場”は要注意。
水が集まる地形だと、一気に危険度が上がる。
■④ 風圧で配管が揺さぶられる“減圧器トラブル”
ボンベの上部には「減圧器」という重要パーツが付いている。
台風時はこの部分に風圧が集中しやすく、
・緩み
・折れ
・ホース抜け
が起きることがある。
減圧器の異常は“ガス漏れの最大の原因”であり、災害後の点検でも最優先項目になる。
■⑤ ボンベ置き場の“最低限の安全基準”
住民でもチェックできるポイントは次の通り。
【✓ チェーンは2段で固定されているか】
【✓ ボンベの間隔が適正か】(密集しすぎはNG)
【✓ 下地がコンクリートで平坦か】
【✓ 排水が確保されているか】
【✓ 周囲に可燃物が置かれていないか】
【✓ 減圧器・ホースにサビやひび割れがないか】
一つでも異常があれば、管理会社やガス会社に報告した方がいい。
■⑥ 火災が発生した場合の“危険性”
プロパンガスは都市ガスより“火炎温度が高い”のが特徴。
もし火災が近くで発生すれば、ボンベは次のような状態になる。
・加熱で圧力が急上昇
・安全弁が開き「シューッ」とガス放出
・炎に引火すると一気に火柱
・最悪の場合、爆発
消防現場では“ボンベは絶対に近づくな”が鉄則。
住民は発見したらすぐ119番し、安全な距離を取る。
■⑦ 防災士として推奨する住民の備え
集中プロパンのルートは「建物全体に依存」。
だから家庭内でもガスが止まっても生活できる備えが必須。
【家庭で備えるもの】
・カセットコンロ+ボンベ
・非常用ポータブル電源
・断水に備えた飲料・生活用水
・停電ライト(ランタン)
・モバイルバッテリー
【屋外で確認すべきもの】
・ボンベ置き場の固定状況
・外配管のサビ・ひび
・排水性(大雨時に水が溜まらないか)
・近くに倒れかかってくる構造物がないか
■⑧ まとめ
・集中プロパンのボンベ置き場は災害時の“弱点”になりやすい
・チェーン固定・減圧器・排水・外配管の劣化は重大リスク
・住民でも簡易チェックで安全性を高められる
・ガス復旧が遅れる可能性を見据え、家庭内の調理手段を必ず確保
・管理会社とガス会社の“二重点検”が集合住宅の防災力を左右する
集中プロパンは便利な一方、集合住宅全体が同じシステムで動いているため、災害時は「建物としての防災力」がそのまま生活の安全に直結する。
日頃からボンベ置き場をチェックし、家庭側の備えも整えておくことで、どんな災害にも強く備えることができる。

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