【元消防職員・防災士が解説】プロパンガスは“安全ではない”?災害時に起こる本当のリスクと対策

災害時、プロパンガス(LPガス)は「復旧が早い」「停電に強い」と思われがちだが、実は重大なリスクが隠れている。
特に“集中プロパン方式”の地域では、被害が拡大しやすく、火災につながる例も多い。

ここでは、現場で実際に見てきたプロパンガス災害の弱点と、家庭でできる安全対策をまとめる。

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■① プロパンガスは“復旧が早い”のではなく“個別対応できる”だけ
一般家庭でよく使われるプロパンガスは、次の理由で災害に強いと言われる。

・タンクが個別設置のため、地域全体が止まることは少ない
・配管距離が短いため点検が早い
・工事がシンプルで復旧が早いこともある

しかし、これはあくまでも“うまくいけば”の話。
地震や土砂災害ではタンクの転倒・配管破損が起き、火災の原因になることも多い。

■② 集中プロパンは災害時の“弱点が多い”
集中プロパン方式とは、アパート・住宅地・団地などで一つの大きなタンクから各家庭へガスが供給される仕組みだ。

このタイプには災害時の大きな弱点がある。

▼集中プロパンのリスク
・1か所のタンクが損傷すると全世帯が一斉に止まる
・タンクの転倒が起きると大規模火災になる危険
・配管が長く、破損ポイントが増える
・点検に時間がかかる

つまり、集中プロパンは“プロパンのメリットが減る”方式と言える。

■③ LPガスは空気より重い→家屋に溜まりやすい
プロパンガスは「空気より重い」。
地震で配管が壊れると、ガスは低い場所に溜まり、次の危険が起きる。

・床下に溜まる
・地下室に溜まる
・水回りの隙間に溜まる
・ちょっとした火花で爆発

実際、地震後のプロパン火災の多くが
“漏れたガスが室内に溜まっていた”
ことが原因。

消防現場では、ガス臭通報の出動が大量に発生する。

■④ 停電でも“ガス器具は使えない”
プロパンガスは「停電でも使える」と誤解されているが、以下はすべて使えない。

・給湯器
・ガスファンヒーター
・ビルトインコンロの電子点火

停電で止まるのはプロパンも都市ガスも同じ。
災害時は“ガスが無事でも機器が動かない”ことを忘れてはいけない。

■⑤ 災害時に絶対にやるべき安全確認
プロパンガスは安全のため、災害後は必ず次の確認が必要だ。

【1】ガス臭がしないか確認
【2】タンクが倒れかけていないか見る
【3】配管やホースが抜けていないか
【4】建物が傾いていないか
【5】不安があれば絶対に自分で使用しない

少しでも異常があれば、ガス会社が点検するまで絶対に使用しないこと。

■⑥ 家庭が用意すべき“プロパンの災害対策”
プロパンガス特有のリスクに備えるため、次の準備が重要。

●① 換気対策
・窓が開く構造か
・通気口を塞いでいないか
・台所・床下の通気を確保

●② ガス漏れ時の代替熱源
・カセットコンロ
・ボンベ(9〜12本)
・湯沸かしポット(電気復旧後用)

●③ 火気使用のルール
・ガス臭がしたら火気厳禁
・スイッチのオンオフもNG
・換気してから安全確認

●④ 集中プロパン地域は“避難判断が早め”
・タンク損傷=大規模事故
・消防が現場に入れない場合もある
・自己判断を遅らせると危険

集中方式の地域は、災害強度が高い時ほど早期避難が安全。

■⑦ まとめ
・プロパンは災害に強いと言われるが、それは個別対応できるから
・集中プロパンはタンク1つで全世帯に影響→大規模火災リスク
・プロパンは空気より重く、低い場所に溜まりやすい
・停電で給湯器・暖房はどのみち使えない
・ガス臭・配管破損・タンク転倒の確認は最重要
・集中プロパン地域は避難判断を早めに
・代替の熱源と換気対策は家庭必須

プロパンガスは便利だが、災害時は“都市ガスとは違う危険”が露出する。
正しい知識と準備が、家族の安全を守る大きな力になる。

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