【元消防職員・防災士が解説】電気自動車(EV)は“防災の切り札”になるのか?メリット・注意点をまとめる

電気自動車(EV)は、普段はエコで静かで快適な乗り物だが、災害時には“非常用電源”として活躍する可能性がある。
一方で、使い方を誤ると逆に危険な場面もあるため、正しい知識が欠かせない。

今回は、防災の観点からEVのメリット・弱点・注意点をまとめる。

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■① EVは“巨大なモバイルバッテリー”として使える
多くのEVは40〜60kWh以上のバッテリーを搭載しており、家庭の1〜2日分の電力に相当する。

【災害時に使える可能性があるもの】
・冷蔵庫
・照明
・スマホ・パソコン
・電気毛布
・ポータブル電源の充電
・医療機器(在宅酸素など、一部モデル)

※V2H(車から家に給電するシステム)があると自宅へ直接送電できる。

“在宅避難”の強力な武器になるのがEVの最大の防災メリットだ。

■② 寒さ・暑さの中でも“車内が避難スペースになる”
停電して暖房や冷房が止まった自宅より、EV車内のほうが安全な場合もある。

【メリット】
・車内でエアコンが使える
・赤ちゃん・高齢者が安心
・スマホ充電OK
・雨風をしのげる

特に夏と冬の停電では、車内エアコンは命を守る装置になる。

■③ ただし“ガソリン車より避難時の機動力は弱い”
防災でEVを語る時に、必ず押さえるべき弱点がある。

【弱点】
●大規模停電時、充電スポットが機能しない
●渋滞が長引くとバッテリー消耗の不安
●寒冷地では電費が落ちやすい

“遠距離の避難”ではガソリン車が有利な場面が多い。

■④ EVを防災に生かすためにやっておくこと
EVを「災害に強い車」に変えるには、普段の準備が必要だ。

【必須の備え】
●災害が近づいたらバッテリーを80〜100%にしておく
●車内に充電ケーブル・延長コード
●車内に食料・水・ブランケット
●停電時に使いやすいLEDランタン
●ポータブル電源と併用できる体制

特に台風前は“満充電”が命綱。

■⑤ V2Hがあれば“家まるごとバックアップ電源”になる
V2H機器(Vehicle to Home)が自宅にあると、EV→家へ電気を送って家庭の電灯や冷蔵庫が普通に使える。

【メリット】
●停電しても生活が続く
●太陽光+蓄電池+EV=最強の災害対策
●避難せず在宅避難しやすい

【注意点】
・V2H設備は高額(数十万円〜)
・対応車種が限られる

ただし“家単位での防災力”は劇的に上がる。

■⑥ EV単体では弱い場面=“避難の足としての長距離”
防災という視点で見たとき、EVの弱点は主に以下。

【弱点まとめ】
・充電できないと動けない
・長距離避難に不向き
・雪国は電費が落ちて不利

つまり、
「在宅避難には強い」
「遠距離避難には弱い」
という特徴がはっきりしている。

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■まとめ
電気自動車は、防災の観点で見ると“万能ではないが強力な武器”。
特に以下の場面で圧倒的に強い。

●停電中の生活維持
●車内避難
●家族の安全確保
●在宅避難

一方で、
●長距離避難
●寒冷地の走行
には注意が必要。

EVを「防災に強い車」にするコツはただ1つ。

災害が近づいたら必ず満充電にすること。

これだけで、災害時の安全度は大きく変わる。

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