【元消防職員が解説】静脈穿刺トレーニングパッド「IV Pad Pro」と災害時に強い医療教育の作り方

災害時、避難所や臨時の救護所では「点滴を入れたいのに、静脈路が確保できない」という場面が現実に起こります。照明が不十分、寒さで血管が細い、患者さんが不安で動く、周囲が騒がしい――平時の実習環境とは条件がまるで違います。
そうした“現場に近い条件”を想定して練習できる器材として、新製品「IV Pad Pro(品番:JMK012)」が案内されています。マネキンの腕に装着して使う静脈穿刺トレーニングパッドで、触知感や穿刺感を実感に近づけることを狙ったものです。


■① 災害時に「静脈路確保」が難しくなる理由

災害時は、いつも通りの穿刺ができない条件が揃います。

・寒さ・脱水で血管が出にくい
・照明不足、作業スペース不足
・患者さんの不安・緊張で体動が増える
・手袋・防寒着で手指感覚が鈍る
・周囲の雑音や人流で集中が切れる

被災地での活動では、「技術そのもの」よりも「条件が悪い中で落ち着いて安全に行う力」が結果を左右する場面を何度も見ました。だからこそ、平時から“悪条件前提”で訓練しておく価値があります。


■② IV Pad Proとは何か(できること・前提)

案内されているIV Pad Proは、マネキンの腕に装着して使用する静脈穿刺トレーニングパッドです(人体への装着は不可)。
ポイントは「実技の再現性」と「準備のしやすさ」です。

・穿刺・触知の感触が実感に近いシリコン素材
・固定ベルトはマジックテープで簡単に確実装着
・点滴トレーニングが可能
・三方活栓を閉じると、穿刺時に逆血確認ができる
・推奨針サイズは22G以下
・定価:40,000円(税込44,000円)
・品番:JMK012

“成功体験だけの練習”ではなく、逆血確認や固定・手順まで含めて繰り返せる設計思想が読み取れます。


■③ こういう訓練が「災害に強い」

災害対応で強いのは、上手い人より「手順が崩れない人」です。器材があるなら、次の練習が効きます。

・声かけ(患者説明)→固定→穿刺→逆血→ルート固定までを一連で回す
・暗所を想定して、照度を落として実施
・冬季を想定して、薄手手袋を着用して実施
・時間制限を設けて、焦りが出た時の癖を確認する

私が元消防職員として訓練を見てきた経験でも、手順が崩れる瞬間は「焦った時」「周囲がうるさい時」「失敗した直後」です。そこをあえて再現して耐性を付けるのが、実戦的な教育になります。


■④ 安全管理のポイント(事故を起こさない設計)

穿刺トレーニングは、教育器材が整っても安全管理が最優先です。

・針刺し事故防止(廃棄容器、手元の動線、声かけルール)
・「できた/できない」よりも、手順逸脱の有無を評価
・固定が甘いまま刺さない(失敗の多くは固定不足)
・手袋・照明・姿勢を含めて“現場の型”を作る

災害時は人員も資材も限られます。だからこそ、平時に「安全に、短時間で、再現できる型」を持っているチームが強いです。


■⑤ 教育現場での使いどころ(消防・救急・看護・施設)

IV Pad Proのような器材は、次の場面で特に相性が良いです。

・新人~中堅の“反復”に使う(成功率より手順の安定化)
・講習会で「触知→穿刺→逆血→固定」の一連を揃える
・災害医療訓練の前段として、基本動作を短期で底上げする
・指導者側が、同じ条件で複数名を評価できる

現場感を強めるほど、教育は「感想」ではなく「観察と改善」になります。


■⑥ 被災地で実感した“差が出る瞬間”

被災地派遣で印象に残っているのは、同じ技量でも「準備と落ち着き」で結果が変わる場面です。
周囲がざわつく救護所で、患者さんが不安そうに手を動かす。照明が足りず、手元が影になる。そんな状況で、刺す前に固定と説明が丁寧な人は成功率が高い。逆に、焦って刺す人ほどやり直しが増え、患者さんの不安も増えます。

私自身、防災士として避難所環境を見てきた経験でも、医療行為は“技術”だけでなく“環境と心理”に左右されると痛感しています。訓練器材は、その差を埋めるための道具です。


■⑦ 導入判断の目安(買う前に決めること)

導入前に、次の3点を決めておくと失敗しません。

・誰が、いつ、どの頻度で使うか(使われない器材は無意味)
・評価基準は何か(成功率ではなく、手順逸脱ゼロなど)
・消耗・補給・管理担当を決める(運用が崩れると継続できない)

器材は買って終わりではなく、「運用ルールが教育効果を決める」と考えるとブレません。


■⑧ まとめ(結論)

災害に強い医療教育は、“悪条件でも手順が崩れない型”を作ることです。
IV Pad Proのようなトレーニングパッドは、触知・穿刺・逆血確認・点滴・固定までを現場に近い形で反復するための選択肢になります。
平時に積んだ反復は、非常時の「落ち着き」と「安全」に変わります。教育の現場こそ、備えの最前線です。


出典:Laerdal Medical(レールダル メディカル)製品カタログ(総合カタログ案内ページ)
https://laerdal.com/jp/support/catalog/

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