【元消防職員・防災士が解説】エアーテントを“避難所の一部として使う”ときの注意点|プライバシー確保と安全性の両立

エアーテントは災害時の個室スペースや医療ブースとして活用されることが増えている。
ただし、避難所に設置する場合は「安全性」「換気」「周囲の動線」を考えないと、トラブルや事故を招くことがある。

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■① 避難所の“動線づくり”が最重要
エアーテントを置く位置によって、避難所の流れが大きく変わる。

【ここが危険ポイント】
・入口付近に置くと人の流れを遮断
・廊下や通路側に置くとつまずき事故
・消火器や非常口の前に置くと致命的な妨害

エアーテントは軽量で移動しやすいが、
一度設置すると「そこが人の生活空間」になる。

動線を細くしない設営が鉄則。

■② 換気の悪さで“感染症リスク”
エアーテントは気密性が高いため、換気不足になりやすい。

【避難所で起きやすい問題】
・CO2濃度が急上昇
・呼気や湿度がこもる
・ウイルス・菌が滞留しやすい

避難者が体調を崩した例もあり、
必ず「入口を少し開ける・小型ファンを入れる」など換気対策が必要。

■③ プライバシー確保は最高だが“声は筒抜け”
エアーテントは視覚的なプライバシーは守れるが、音は通りやすい。

【よくある勘違い】
・個室=完全防音ではない
・家族の相談や体調の話が聞こえる
・近くの騒音がそのまま伝わる

避難所の“静寂性”は期待できないため、
重要な話は別スペースで行うほうが安全。

■④ 子ども・高齢者は“転倒リスク”に注意
エアーテントの入口は段差やつまずき要素がある。

【よくある危険】
・未就学児が入口の縁で転ぶ
・高齢者がフレームに手を引っ掛ける
・夜間にライトなしで出入りして転倒

出入口周りをテープで囲うなど、
「目印づくり」が事故防止に役立つ。

■⑤ 電源を使うと“延長コードの事故”が増える
避難所で電気を使う場合、コード類が集中する。

【コード事故の典型】
・足に引っ掛かって転倒
・埃がたまってトラッキング火災
・許容量オーバーで発熱

エアーテント内に複数の電気機器を持ち込む場合は、
発火しにくい延長コードにしたい。

■⑥ 夜間は“内部の光”が漏れてストレスになる
エアーテントの生地は厚みがあっても、光は意外と透ける。

【避難所で起きがちな問題】
・夜中のライトが周囲の睡眠を妨害
・外が明るいと内部が眠りにくい
・医療ブースの光が広がる

光の漏れは避難所全体に影響するため、
周囲に向けない配置・内側に布をかぶせるなど工夫したい。

■⑦ “自治会・避難所運営側のルール”が必要
エアーテントは便利だが、好き勝手に設置すると混乱が起きる。

【よく起きるトラブル】
・「うちも欲しい」「ここに置きたい」から始まる場所争い
・優先順位が曖昧で不公平感
・利用ルールがなくトラブルが頻発

避難所運営会議で、
「誰を優先するか」「どこに設置するか」を決めることが大切。

■⑧ ペット同行避難で“区画づくり”に使える
エアーテントはペットスペースとしても活用できるが、注意が必要。

【注意点】
・鳴き声が響きやすい
・換気不足でにおいがたまる
・周囲の避難者の同意が必要

自治体によっては、
“ペット用エリアを外に作る”運用もある。

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■まとめ
エアーテントは避難所において、
「プライバシー確保」という最大のメリットを持つ一方、
動線・換気・音・光・安全性に問題が生じることがある。

【避難所でのエアーテント利用の要点】
・動線をふさがない
・換気を徹底する
・音と光は制御しにくい
・出入口の段差に注意
・コード事故に気を付ける
・運営ルールを作る

使い方次第で、避難生活の質が大きく向上する。
弱点を理解したうえで活用することが、安全で快適な避難所づくりにつながる。

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