【元消防職員・防災士が解説】エアーテントの弱点と導入時の注意点|避難所運営で見落としがちなポイント

災害対応で“即応性の高い装備”として注目されるエアーテントだが、
メリットだけでなく弱点もある。
自治体や地域で導入する場合、ここを理解していないと現場で困る。

避難所運営のリアルを踏まえて、注意点をまとめる。

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■① 電源がないと膨らませられない
エアーポンプ(電動)が必須のため、停電時は電源確保が前提になる。

【停電下で起きる課題】
・AC電源なし → 膨らませられない
・発電機が不足すると使えない
・避難所開設の初動が遅れる

災害時は“電源争奪戦”になりやすいため、
エアーテント専用に小型発電機やポータブル電源を確保しておく必要がある。

■② 強風・暴風には弱い
空気で支える構造上、一般の金属フレーム式テントより風に弱い。

・横風を受けると揺れやすい
・風速10m以上で安全性が不安定
・屋外で長時間の運用には向かない

屋外設営の場合は、しっかりした固定と重りが必須。

■③ 破損リスクが“ゼロではない”
エアーテントは、尖ったもの・鋭利なものに弱い。

・ペグや工具の扱い
・地面の石やガラス片
・避難者が荷物をぶつける
・子どもが内部で走り回る

※現場では「穴あき予備シート」や「補修キット」を常備しておくのが基本。

■④ 室内・体育館向けで、屋外長期利用には不向き
多くの自治体が体育館内で使う理由はこれ。

【屋外が向かない理由】
・雨・風の影響を受けやすい
・気温で内部環境が変わる
・長期運用すると劣化が早い

日中の気温差だけで内部温度が変わり、夏場は熱がこもりやすい。

■⑤ 換気が難しく、感染症対策に工夫が必要
密閉性が高い=空気がこもりやすい。

・CO₂濃度が上がる
・湿度が高い状態になりやすい
・発熱者用に使うと蒸し暑くなる

小型のサーキュレーターや換気グッズはセットで備蓄すべき。

■⑥ 保管時の劣化リスクがある
空気式なので、保管環境が悪いと劣化しやすい。

【起きるトラブル】
・ゴム部分の硬化
・カビ
・素材の伸び
・空気弁の劣化

倉庫が湿気の多い地域はこまめな点検が欠かせない。

■⑦ 訓練をしないと実戦では使えない
エアーテントは“簡単”と言われるが、初見で組める人はほぼいない。

・バルブの数が多い
・手順を間違えると膨らまない
・片付けに意外と時間がかかる

年1回の避難所運営訓練で“必ず実物を使う”ことが重要。

■⑧ 人手がゼロだと運用が難しい
空気だけで形は作れるが、設営には最低2〜3人は必要。

・1人では立ち上げづらい
・安全確認ができない
・屋外では固定作業が不可

自治体は地域住民と一緒に“運営担当チーム”を作っておくと運用しやすい。

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■まとめ
エアーテントは災害対応で非常に便利だが、
弱点を理解していないと現場で必ずトラブルになる。

【エアーテントの注意点】
・電源が必須
・風に弱い
・破損リスクがある
・屋外長期利用に不向き
・換気しにくい
・保管環境で劣化する
・訓練しないと使えない
・1人運用は不可

実際の避難所運営では、
“メリットとデメリットをセットで理解すること”が、防災力の差になる。

地域で導入するときは、
①訓練、②保管環境、③電源確保の3つを必ず整えておくことが重要だ。

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