【元消防職員・防災士が解説】エアーテントは“万能ではない”|静粛性・断熱性・プライバシーのリアル

災害現場でよく見るエアーテントは、
避難所・医療エリア・受付などに使われる便利な装備だが、
実際に運用してみると“見落とされやすい弱点”がまだある。

現場経験をもとに、さらに深い注意点をまとめる。

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■① 外部の音が想像以上に響く
エアーテントの素材は布と空気のため、遮音性は低い。

・周囲の声がそのまま聞こえる
・体育館の反響音も入り込む
・プライバシー空間として不十分

「発熱者隔離スペース」として使う場合も、
会話内容が外に漏れやすく、心理的負担になることがある。

■② 断熱性が弱く、温度管理が難しい
素材が薄いので、夏は暑く、冬は寒い。

【夏】
・内部が蒸し風呂状態
・熱気が逃げない
・熱中症リスクが高い

【冬】
・冷気を遮れない
・暖房の効きが悪い
・結露で内部が濡れる

避難所で使う際は、
小型ストーブ・スポットクーラーを併用しないと厳しい。

■③ 夜間照明で影が透ける
照明器具を内部で使うと、外から“人影が見える”構造。

・着替えスペースとして不向き
・感染者対応スペースでも不安を与えやすい
・夜間は特に輪郭がくっきり出る

プライバシー重視の用途なら、
外側に遮光カーテンを“二重掛け”する必要がある。

■④ 床が不安定で高齢者に向かない
エアーテントは地面に直接広げるため、床は硬くない。

・杖の先が引っかかる
・イスの脚が沈む
・高齢者がつまずきやすい

災害時は高齢者の転倒事故が非常に多いため、
ブルーシートの上にコンパネを敷くなど、床補強が必須。

■⑤ 屋外設営では日差し・雨で劣化が早まる
素材がUVや湿気に弱いため、屋外長期使用は劣化を招く。

・紫外線で生地が弱る
・雨水の溜まりでシームが傷む
・内部の湿気でカビ

短期運用向けであり、“長期間の仮設テント”としては向かない。

■⑥ 空気量が大きく、補充作業が必要になる
1回膨らませても、時間とともに空気が抜けていく。

・長期使用で天井が下がる
・気温変化でも変形する
・定期的な空気補充が必要

夜間にしぼむと、内部の照明や備品の重さで倒れやすくなるため注意。

■⑦ 内部での火気利用はNG
素材が火に弱いため、テント内での火気使用は基本不可。

・アルコールストーブ
・カセットボンベ
・石油ストーブ

特に避難所では火災リスクが高いので注意が必要。

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■まとめ
エアーテントは便利だが、過大評価されがち。

【今回のポイント】
・遮音性がない
・断熱性が弱い
・光で影が透ける
・床が不安定
・屋外で劣化しやすい
・空気補充が必要
・火気使用ができない

災害対応では“テントそのものより、どう運用するか”が重要。

エアーテントを避難所や地域で導入する場合は、
・床の補強
・照明と遮光対策
・換気と温度管理
・定期的な空気補充
・火気の禁止
これらをセットで準備しておくことで、運用トラブルが大幅に減る。

地域防災は、装備よりも“運用スキル”が命を守る力になる。“`

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