災害時に活躍するエアーテントは、避難所・医療・受付・物資拠点など
さまざまな場面で使われている。しかし、性能の高さだけを見て導入すると、
実際の運用で「こんなはずじゃなかった」というトラブルが多い。
ここでは、導入前に押さえておくべき重要なリスクをまとめる。
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■① エアー漏れは“必ず起こる”という前提で使う
エアーテントは空気で形を維持するため、
どれだけ慎重に扱っても微細なエアー漏れは避けられない。
・長時間運用で徐々に形が崩れる
・気温差でも空気量が変化する
・夜間に気づくと大きくしぼんでいることも
「日中は問題なし → 夜間に倒壊寸前」というケースも実際にある。
■② 温度管理が難しく、夏は“蒸し風呂”になりやすい
エアーテントは密閉性が高く、換気が不足すると内部温度が危険レベルに上昇する。
・直射日光の影響を受けやすい
・空気の滞留で熱がこもる
・高齢者や乳幼児は熱中症リスクが高い
夏季の運用は特に専門的な温度管理が必要になる。
■③ 冬は逆に“結露地獄”になる
内部の温度差によって結露が大量発生し、床面が危険な状態になる。
・滑って転倒しやすい
・医療機材や物資が濡れて故障
・結露が凍結する地域ではさらに危険
気候に合わせた除湿や換気が不可欠。
■④ 電源トラブルが命取り
エアーテントによっては、送風機(ブロワー)を継続稼働させるタイプもある。
・電源が落ちるとテントが倒れる
・暴風雨でコードが濡れる危険
・発電機の燃料切れが運用に直結
「電源なしで維持できるタイプか」を事前に確認しておく必要がある。
■⑤ 設営は慣れないと“意外と時間がかかる”
エアーテント=すぐ建つというイメージが強いが、実際は段取りが重要。
・広いスペースの確保
・人員配置
・ペグ打ち・ロープ調整
・電源取り回し
慣れない自治体や団体では、設営に30〜60分かかることも珍しくない。
■⑥ 風の影響は想像以上に強い
エアーテントは軽量構造のため、強風で揺れやすい。
・瞬間風速で大きく持ち上がる
・物資や布団が倒れる
・医療行為の妨げになる
風速10m以上が予想される状況では設営そのものを見送る判断も必要。
■⑦ 使用後の乾燥・収納が大変
エアーテントは濡れたまま収納するとカビが発生し、次回の運用に支障が出る。
・完全乾燥まで時間がかかる
・広い場所が必要
・人員の負担が大きい
特に雨天の撤収は想像以上に過酷。
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■まとめ:エアーテントは“使える場所・状況を選ぶ装備”
エアーテントは便利なツールだが、
実際の災害運用では、気象・場所・用途の影響を強く受ける。
【導入時のポイント】
・長時間運用の弱点を理解する
・温度管理の対策をセットで用意する
・風対策・排水対策は必須
・電源の有無と安定性をチェック
・収納・乾燥に手間がかかる前提で計画する
エアーテントの性能を最大限に活かすには、
「便利だから使う」ではなく、
「使う条件を整えてから運用する」という考え方が欠かせない。

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