【元消防職員・防災士が解説】トイレカーの“課題点”と導入のハードル

トイレカーは災害時に大きな力を発揮する一方で、導入にはいくつかのハードルもある。
ここでは、自治体や地域がトイレカーを備える際に直面しやすい“課題”をまとめる。


■課題① 導入コストが高い

トイレカーは
・車両本体
・特殊設備
・貯水タンク・汚水タンク
・衛生設備
などを備えるため、数百万円〜1,000万円を超えることもある。

限られた防災予算の中で優先順位をつける際、
どうしても後回しになりやすい。


■課題② 保管スペースの確保が必要

トイレカーは通常の車両より大きく、
・屋内保管スペース
・防犯対策
・雨風から守る車庫
が必要になる。

保管場所の確保は自治体にとって大きな課題の一つ。


■課題③ 維持管理が欠かせない

トイレカーは“使わない期間”の方が長いため、
適切な維持管理をしないと、いざ本番で使えない。

必要なメンテナンス例は以下のとおり。

・汚水タンクの洗浄
・給水タンクの清掃
・定期的なエンジン始動
・バッテリー管理
・消耗品の補充(ペーパー、消臭剤など)

これらの管理には、担当部署の負担が発生する。


■課題④ 運転・設置できる職員の育成

トイレカーは一般車両より取り扱いが複雑で、
・運転技術
・安全な設置方法
・衛生管理
などの研修が必要。

“誰でも運転できる”ものではなく、
担当者を育成し、体制を維持する必要がある。


■課題⑤ 被災地での進入ルートが確保できないことも

道路が
・冠水
・土砂で埋没
・倒木
・陥没
などで封鎖されているケースでは、トイレカーが近づけない。

大規模災害では“移動できる”ことが強みだが、
道路状況によっては到達が遅れるリスクもある。


■課題⑥ 避難所のニーズと合わない場合も

避難所の規模によっては
「トイレカー1台では足りない」
「逆に大きすぎて扱いづらい」
といったケースが生まれる。

特に小規模避難所では、
・簡易トイレ
・携帯トイレ
・ポータブルトイレ
などの方が実用的な場合もある。


■課題⑦ 他のトイレ対策との“すみ分け”が必要

災害時は、
・仮設トイレ
・マンホールトイレ
・ポータブルトイレ
・携帯トイレ
など、複数のトイレ対策が同時に運用される。

トイレカーが効果を発揮するためには、
“どの段階で・どの場所で・どう使うのか”
という運用設計が必要。

これが曖昧だと、
せっかくの装備が十分に活かされない。


■まとめ

トイレカーは、
避難所の衛生環境改善・復旧作業の効率化など
災害時の大きな力になる装備だが、導入には課題も多い。

・高コスト
・保管場所
・維持管理
・人材育成
・道路状況による制約
・避難所規模とのミスマッチ
・他のトイレ対策との運用設計

これらを踏まえた上で、
地域の実情に合わせて導入を検討することが重要になる。

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