【元消防職員・防災士が解説】災害時に“キッチンカー”が強い理由

災害が起きると、多くの避難所で食事提供が大きな課題になる。
そんなときに力を発揮するのが「キッチンカー」だ。
普段はイベントや移動販売で活躍する車両だが、実は防災面でも非常に相性が良い。


■キッチンカーが防災に向いている理由

① 移動できる“調理拠点”になる

電気・ガス・水道が止まった地域でも、
キッチンカーは車両内に必要な調理設備を搭載しているため、
その場で食事を提供できる。

・炊き出し
・温かいスープ
・パンや麺類
・高齢者向けのやわらかい食事
なども作ることができ、避難者のストレス軽減に役立つ。


② 避難所をまたいで移動しながら支援できる

固定炊き出しでは届かない小規模避難所や、
高齢者居住エリアにも移動して提供できる。

“必要な場所へ必要な量”を届けられるのは大きな強み。


③ 車両内で完結するため衛生管理がしやすい

災害時の炊き出しは
・調理場所が不衛生になりやすい
・雨天時の衛生リスク
・虫や土埃による混入
が問題になる。

キッチンカーなら
・密閉空間
・設備が整っている
ため、衛生面を保ちやすい。


④ 電源・ガスを積んでいる車両は停電時も稼働できる

キッチンカーの多くは
・LPガス
・発電機
・バッテリー
などを搭載している。

停電中でも温かい食事を提供でき、
避難所のライフラインが復旧するまでの“つなぎ”として非常に有効。


⑤ 大規模支援と相性がいい

大きなイベントで大量調理に慣れている業者が多く、
以下のような対応が得意。

・短時間で数百食を提供
・提供ラインを効率的に回す
・衛生管理のマニュアル化

災害現場でも、そのノウハウが生かせる。


■キッチンカーが災害時に担える役割

・避難所での炊き出し
・高齢者施設・福祉避難所の食事支援
・支援物資が届くまでの食事提供
・復旧作業員への食事提供
・自宅避難者向けの巡回支援
・地域イベントと連動した事前訓練

特に「自宅避難者」への巡回支援は、実は大きな課題のひとつ。
キッチンカーなら、道路が確保されていれば個別に食事を届けられる。


■課題と注意点

キッチンカーにも弱点はある。

・調理燃料(LPガス)が尽きると運用停止
・水の確保が必須
・保健所の許可・衛生基準の確認が必要
・通行規制で現場に入れないリスク
・大量調理時はスタッフ人数が必要

災害時に活かすには、事前に自治体との協定や訓練が欠かせない。


■まとめ

キッチンカーは、災害時の「食のライフライン」を支える心強い存在。
機動力・衛生面・独立した調理能力など、避難所との相性が非常に良い。

地域防災計画に組み込まれるケースも増えており、
今後“移動できる炊き出し拠点”としてさらに活躍が期待される。

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