【元消防職員・防災士が解説】ATMカーは“金融インフラの最後の砦”になる|災害時に必要とされる理由

大規模災害では、停電や通信障害によってATMが使えなくなるケースが多い。
そんなときに力を発揮するのが「ATMカー」。
銀行が保有する“移動式ATM”で、災害対応において非常に重要な役割を担う。

ここでは、ATMカーが防災で必要とされる理由をわかりやすくまとめる。


■ATMカーは「現金アクセス」を守る移動インフラ

災害時はキャッシュレス決済が一気に不安定になる。

・停電で端末が使えない
・通信障害で決済が通らない
・店舗側の設備が壊れている
・スマホのバッテリー切れ

こうなると、一周まわって現金が最強になる。

しかし、肝心のATMが動かなければ現金も引き出せない。
そこで役に立つのが、金融機関が保有するATMカー(移動ATM)だ。

・自家発電機で稼働
・衛星回線などで通信
・車両そのものが銀行機能を持つ

つまり、現金インフラがこちらへ移動してきてくれる装置である。


■被災者の生活再建に「現金」は不可欠

災害後の数日間、現金が必要になる場面は多い。

・飲食店の現金支払い
・バスやタクシー利用
・給水所までの移動
・生活用品の購入
・高齢者の病院代支払い

特に、
スマホが充電できない環境では電子決済がほぼ機能しない。

ATMカーの配備があれば、
被災者が最低限の生活を続けるための“生命線”を確保できる。


■避難所での混乱を抑える“安心材料”になる

避難所では、「お金がない」ことが大きな不安につながる。

・手元の現金が減って不安
・子どもへの食事や生活用品を買えない
・高齢者が病院に行けない
・仕事や生活費の心配が膨らむ

ATMカーが来るだけで、

・現金が確保できる
・行動の自由が生まれる
・精神的な安心感が増す

という効果があり、避難所全体の落ち着きにもつながる。


■地域金融機関の“災害対応力”の象徴となる

ATMカーは単なる車両ではなく、
地域金融機関が持つ“レジリエンス(復元力)”の象徴でもある。

・災害発生直後から現場へ急行
・被災地のニーズに応じて場所を変えられる
・復旧までの空白期間を埋める

銀行の店舗が被災すると、金融サービスは止まる。
その穴をATMカーが埋めることで、

「地域銀行が住民を守る」という明確なメッセージ

にもなる。


■キャッシュレス社会でも“現金インフラの確保”は必須

日本はキャッシュレス化が進んだとはいえ、
災害時に確実に動くのは現金だけ。

大規模災害では
“最終的に信用されるのは現金”
という現実がある。

ATMカーはその現金へのアクセスを守る最後の砦。

電気・通信・金融が不安定になる状況でも、
住民の生活を支え続けることができる。


■まとめ

ATMカーが防災で求められる理由は明確だ。

・停電・通信障害でも現金を引き出せる
・被災者の生活再建を支える“生命線”になる
・避難所の不安・混乱を抑える効果
・金融機関の災害対応力を高める
・キャッシュレス時代でも現金インフラを守れる

災害が多い日本では、
ATMカーは「移動する金融インフラ」として非常に重要な存在。

防災計画の中でも、今後さらに活用が進むべき支援車両である。

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