【元消防職員・防災士が解説】災害支援カーの“知られざる課題”|頼りになる存在だが万能ではない理由

災害時にさまざまな“〇〇カー”が活躍する一方で、
実はそれぞれに限界や課題もある。
防災を考えるうえで、この弱点を理解しておくことは非常に重要だ。

ここでは、災害支援カーが抱える課題をわかりやすくまとめる。


■① 道路寸断で“そもそも現場に入れない”問題

どれだけ優秀な支援カーでも、道路が崩れたり、土砂に埋まったりすれば到達できない。

・土砂崩れ
・倒木
・建物倒壊
・液状化

こうした障害があると、支援カーは完全にストップする。

特に山間部・海沿いは孤立しやすく、
早期救援が難しいケースも多い。


■② 待ち時間が長くなる“ボトルネック”

トイレカー・シャワーカー・ATMカーなどは、同時に利用できる人数が限られている。

そのため、

・長蛇の列
・数時間待ち
・子どもや高齢者が並べない

といった状況も発生する。

大型イベントのトイレ混雑を想像すればわかりやすい。


■③ 燃料・水・電力の“補給が命”

支援カーの多くは、

・燃料
・水
・電力
・ガス

などを必要とする。

しかし被災地では補給が困難になり、稼働時間が短くなることもある。

特に給水車・シャワーカー・キッチンカーは水の確保が最大の課題だ。


■④ 支援カーは“応急対応”であり、常設設備には勝てない

どれだけ頼りになる支援カーでも、
避難所に常設されている設備ほどの能力はない。

・シャワーの水圧が弱い
・トイレの処理能力が低い
・キッチンカーの調理量に限界
・電源車の電力量に制限

あくまで「応急的に最低限を確保する」ための存在だ。


■⑤ 被災地のニーズによっては“合わない”こともある

例えば、

・高齢者が多い地域
・乳幼児が多い避難所
・身体の不自由な人が多い地域

こうした場所では、設備や動線が合わず、十分活用できないケースもある。

シャワーカーや移動入浴車は介助スタッフが不足すると機能しない。


■⑥ 運用には“専門スタッフ”が必要

多くの支援カーは技術者・専門職が同行する。

・電源車 → 発電技師
・通信支援カー → 通信技術者
・キッチンカー → 調理スタッフ
・入浴車 → 介助スタッフ

人材不足や派遣調整の難しさも課題だ。


■⑦ 支援カーの数は“全国でも限られている”

災害が同時多発すると、
すべての被災地に十分な支援カーを送るのは不可能になる。

特に地方では台数が少なく、一つの県に数台しかないケースも珍しくない。


■⑧ 利用場所の確保が必要

支援カーは大きいため、

・駐車スペース
・給水ホースの接続地点
・発電の安全距離
・人の動線

などの環境が整わないと設置できない。

避難所によっては設置スペースすら確保できない場合もある。


■まとめ|支援カーは“万能ではないが、被災地の大きな力”

支援カーには多くの強みがある一方で、

・数が限られている
・現場に入れないことがある
・応急対応としての限界がある

といった現実もある。

だからこそ大切なのは、

「支援カーが来る前提で備えないこと」

・家庭の備蓄
・簡易トイレ
・モバイルバッテリー
・ガスボンベ
・飲料水の確保
・地域の防災力向上

こうした“自助・共助”をしっかり整えた上で、
公的支援カーが入ってきたときに最大限活用できる地域が、強い地域になる。

災害への備えは、支援カー“だけ”に頼らないことが何よりの防災になる。

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