【元消防職員・防災士が解説】農業用ハウスと災害リスク|倒壊・停電・風害に備える基本ポイント

農業用ビニールハウスは、災害の影響を受けやすい設備のひとつ。
台風・大雪・強風・地震などで一度倒壊すると、再建に大きな時間とコストがかかる。
ここでは、農家が知っておくべき“ハウスの災害対策”をまとめる。


■① 台風・強風に弱い構造を理解する

ビニールハウスは軽量で、風の影響を受けやすい。
特に被害が出やすいのは以下のケース。

● 海沿い・山間部の強風地帯
● 古いアーチ型ハウス
● 補強ワイヤーが緩んでいる
● 経年劣化したフィルムを張り替えていない

風速25〜30m/sを超えると、骨組みが浮き上がったりフィルムが破れる被害が一気に増える。

→毎年、台風シーズン前にテンション確認・補強が必須。


■② “雪害”は想像以上に危険

大雪は、ハウス倒壊事故の大きな原因。

● 雪の重みでアーチが潰れる
● 屋根の雪が一気に落ちて骨組みを変形させる
● フィルムが凍りつき破損する

特に湿った雪は重く、夜間の積雪で気づいた頃には倒壊寸前ということもある。

→除雪棒・暖房・送風機を備えておくと被害を減らせる。


■③ 停電すると“育苗・加温設備”が止まる

冬~春の育苗作業には欠かせない電源。

● 暖房
● 換気
● 自動灌水
● 加温器

停電でこれらが止まると、苗が一晩で全滅することもある。

農家が備えるべきは、

● 小型発電機
● ソーラーパネル+ポータブル電源
● 重油・ガスのバックアップ

など、電源の二重化だ。


■④ 強風対策は「固定と補強」がカギ

ハウスの風害対策は次の3つに尽きる。

  1. フィルムの張り直し・張り替え
  2. サイドの防風ネット設置
  3. アンカーとワイヤーの増し締め

特に効果が大きいのはワイヤー。
緩んだまま台風を迎えると、支柱ごと浮き上がる危険がある。


■⑤ 地震で起きる“揺れ+落下物”リスク

地震では、以下のようなトラブルが起きる。

● 骨組みの歪み
● パイプのジョイント外れ
● 棚・道具の転倒
● ガラス温室は落下物が凶器に

ビニールハウスの骨組み自体が軽いため倒壊は少ないが、弱点は設備・棚の固定不足

→道具棚の転倒防止、暖房機器の固定は必須。


■⑥ ハウスは“地域の避難資源”にもなる

農業用ハウスは、災害時に地域で活用されることもある。

● 一時避難場所(雨風をしのげる)
● 物資の一時保管場所
● ボランティアの作業拠点
● 集落の炊き出しスペース

特に雪害・風害後の「作業スペース」として利用価値が高い。


■⑦ ハウスの保険は“必ず加入すべき”設備のひとつ

農業共済や火災保険の付帯で補償できる場合がある。

● 台風・雪害・ひょう害
● 落雷
● 強風
● 地震(特約)

再建には数百万〜千万単位の費用が必要なため、保険加入は農家の生命線。


■まとめ|ハウス被害は“備えた分だけ減らせる”

農業用ハウスは災害に弱いが、対策すれば被害は大幅に下げられる。

● 風害:補強・ワイヤー・フィルム
● 雪害:除雪・加温・送風機
● 停電:予備電源
● 地震:設備の固定
● 保険:必ず加入

自然と向き合う農家にとって、防災は日常の一部。
少しの準備で、作物と収入を守ることができる。

“ハウス対策=農家の生命線”として、早めの準備をすすめたい。

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