「地震が起きたら、まずは水と食料」——多くの人がそう考えます。もちろん間違いではありません。
でも、避難生活で先に心と体を追い詰めるのは、「食べられない苦痛」より「出せないパニック」です。
内閣府の世論調査(速報)では、飲料水や食料は備蓄している人が多い一方で、携帯・簡易トイレの備えは3割に届かないことが示されました。
水や食料は配布や炊き出しを待てる場面がありますが、排泄は待てません。しかも「我慢」は、脱水・血栓・感染症などに直結します。
この記事では、避難生活の質と命のリスクを左右する「トイレ備蓄」を、今日から現実的に整える方法をまとめます。
■① いちばん危ないのは「水はあるのにトイレがない」状態
断水や停電が起きると、トイレは一気に“使えない設備”になります。
それでも多くの家庭は、水や食料は準備していても、トイレまで手が回っていません。
ところが避難生活では、トイレの不安があるだけで、
- 水分を減らす
- 食事を減らす
- 外出や移動を控える
という“悪い自己防衛”が始まります。結果、体調を崩しやすくなります。
■② 数字が示す落とし穴:トイレ備蓄は「3割に届かない」
内閣府の世論調査(速報)では、飲料水の備蓄が約7割、食料が約6割に対し、携帯・簡易トイレは約3割未満にとどまったと報じられています。
この差が、そのまま避難生活の“詰みポイント”になります。
「水と食料はあるのに、出せない」
この状態が起きると、生活の維持が一気に難しくなります。
■③ 断水時に「家のトイレへ無理に流す」は危険な場合がある
断水時に、浴槽の残り湯などで無理に流そうとする人は多いです。
しかし、地震などで配管が傷んでいると、
- 漏水
- 悪臭
- 逆流
- 共同住宅での衛生トラブル拡大
につながることがあります。
特に集合住宅では、一つのミスが「全体のトイレが使えない」方向へ転びやすいので、“流す前提”を捨てて、最初から携帯トイレで回す発想が安全です。
■④ 「我慢」は命を削る:脱水・血栓・膀胱炎の連鎖
トイレが不安だと、人は水分補給を止めます。
この我慢が、避難生活での典型的な体調悪化ルートです。
- 脱水(頭痛・倦怠感・熱中症リスク)
- 血栓(いわゆるエコノミークラス症候群)
- 膀胱炎(特に女性で起きやすい)
- 便秘悪化(腹痛、食欲低下、睡眠低下)
「トイレ備蓄」は、衛生だけでなく健康の土台です。
■⑤ 被災地で痛感したのは「トイレが整うと生活が戻る」こと
被災地派遣(LO)として現地に入ったとき、生活の立て直しは“水や食料”だけでは進みませんでした。
トイレが落ち着くと、表情が変わる。会話が戻る。水を飲める。眠れる。
逆に、トイレが不安定だと、みんなの体調と気持ちが静かに削れていきます。
元消防職員としても、救急の現場で「体調不良の背景に、我慢や衛生不良が重なっていた」ケースを何度も見ました。
トイレは“後回しの備え”ではなく、最初に生活を守る備えです。
■⑥ 車中泊避難を考える人ほど、トイレ備蓄は必須
最近は、避難所の混雑回避やプライバシー確保で「車中泊」を選ぶ人も増えています。
でも、車中泊で一番困るのはトイレです。
- 夜間の移動が怖い(防犯)
- 雨天・寒冷で移動が地獄
- トイレの行列で生活が崩れる
車内に「携帯トイレ」と「目隠し(ポンチョ等)」があるだけで、安心感は激変します。
■⑦ まず揃える“最低ライン”はこれ:家族人数×回数×日数
現実的で、いちばん失敗しにくい基準はこれです。
- 携帯トイレ(凝固剤+排便袋):1人あたり1日5回 × 最低3日(できれば7日)
- 黒いゴミ袋:二重にして臭いと漏れ対策
- 防臭袋(BOS等):臭い漏れを劇的に減らす
- 除菌ウェット:手洗い不可の状況の衛生維持
- (余裕があれば)使い捨て手袋/消臭スプレー/簡易目隠し
大切なのは“高級セット”ではなく、続けられる現実セットです。
■⑧ 失敗を減らすコツ:1回だけ「便器にセット」してみる
食料や水はローリングストックできますが、携帯トイレは“使う練習”をしません。
だから災害時に、
- 付け方が分からない
- 袋が合わない
- 置き方が不安定
という失敗が起きがちです。
おすすめはシンプルに、届いたら一度だけ、家の便器にセットして確認すること。
それだけで「これならいける」が手に入り、パニックの芽が減ります。
■まとめ|今日やる最小行動は「1箱買う」だけでいい
トイレ備蓄は、特別な訓練ではなく“日常の想像力”です。
停電して、断水して、暗い部屋でトイレに行きたくなったとき——足元に携帯トイレがあれば、尊厳と健康は守れます。
結論:飲料水や食料と同じか、それ以上に「トイレ備蓄」が避難生活を救います。
防災士として、そして元消防職員として現場で感じるのは、体調悪化の引き金は「我慢」から始まることが多いという事実です。被災地派遣(LO)でも、トイレが整うだけで生活の回復速度が変わりました。
まずは、家族人数 × 5回 × 3日分。
今日、ドラッグストアかネットで「1つ」買う。そこからで十分です。
出典:NEWSjp「3日分携帯トイレ、家庭備蓄27% 飲料水は半数超、政府世論調査」

コメント