災害は、日常が突然止まり、いつもの判断が通用しなくなる出来事です。だからこそ、防災では物を備えることだけでなく、「非日常に少し慣れておくこと」もとても大切です。例えば、電気がない夜を過ごす、あえて不便な環境で寝てみる、限られた水や食事で一日過ごしてみる。こうした小さな体験は、災害時の不安を減らし、落ち着いて動く力につながります。防災の言葉で言えば、これは耐災害力を高める実践でもあります。
■① 耐災害力とは何か
耐災害力とは、災害に耐える力というより、生活、心、体、判断、行動が壊れにくい総合力のことです。災害時に大切なのは、知識があることだけではありません。眠れない、寒い、不安、情報が少ない、先が見えないといった状況でも、少しずつ生活を立て直していけることが必要です。
防災士として見ると、耐災害力は特別な才能ではなく、平時の小さな準備や経験で育てられるものです。その一つが、非日常を少し体験しておくことです。
■② なぜ非日常体験が防災につながるのか
災害時に人が苦しくなるのは、危険そのものだけでなく、「いつも通りが全部崩れること」です。電気がない、トイレが不便、水が思うように使えない、食事が限られる、眠りにくい。こうした変化が一気に来ると、心も体も思った以上に疲れやすくなります。
だからこそ、平時に少しだけ非日常を経験しておくことに意味があります。一度でも体験しておくと、「全く知らない不安」が「少し知っている不便」に変わります。この差はとても大きいです。
■③ 体験しておくと判断が軽くなる
災害時は、何をどうすればよいか分からず、判断が重くなりやすいです。しかし、非日常を経験していると、「この程度なら何とかなる」「次はこれを優先すればいい」と考えやすくなります。つまり、経験があるだけで判断が軽くなります。
元消防職員として被災地派遣やLOの現場で感じたのは、初めての状況に弱いのは知識不足より、体験不足の方が大きいことがあるということです。少しでも似た状況を知っている人は、最初の一歩が出やすいです。
■④ どんな非日常を体験しておくとよいのか
非日常体験といっても、大げさなことをする必要はありません。例えば、停電を想定して一晩をライトだけで過ごしてみる、カセットコンロで食事を作ってみる、水をいつもより少なく使ってみる、車中泊や簡易マットで寝てみる、スマホを半日使えない前提で過ごしてみる。こうした小さな体験でも十分意味があります。
防災士として現場で見た“誤解されがちポイント”の一つは、本番そっくりの訓練でないと意味がないと思われやすいことです。実際には、日常の中で少し不便を体験するだけでも、耐災害力は育ちます。
■⑤ 子どもや家族にも意味がある
非日常体験は、大人だけでなく子どもや家族にも大きな意味があります。特に子どもは、災害時に「初めてのこと」が重なるほど不安が強くなりやすいです。だからこそ、キャンプのような体験、停電ごっこ、防災食を食べてみる体験などを通じて、不便さに少し慣れておくことが役立ちます。
被災地派遣の現場でも、普段から少し不便な経験をしている子どもの方が、環境の変化に順応しやすい場面を感じました。家族で一緒に体験することは、安心にもつながります。
■⑥ 非日常体験は「不安の減災」になる
防災では、物理的な被害を減らすことだけでなく、不安を減らすことも大切です。非日常を体験しておくと、「知らないから怖い」という不安を少し減らせます。これが、不安の減災につながります。
防災士から見た実際に多かった失敗の一つは、備蓄だけして安心し、実際に使ったことがないことです。物を持っていても、使ったことがなければ不安は減りにくいです。体験してこそ、備えは力になります。
■⑦ 我慢大会にしないことが大切
ただし、非日常体験は苦しさに耐える我慢大会にする必要はありません。大切なのは、「これなら乗り越えられそうだ」という感覚を持つことです。無理をしすぎると、防災そのものが嫌になってしまいます。少し不便を知り、少し工夫できるようになる。それくらいで十分です。
元消防職員として感じるのは、防災はきつくやるより、続く形にする方が強いということです。非日常体験も、楽しさや学びと一緒に取り入れた方が長続きします。
■⑧ 耐災害力は日常の延長で育つ
耐災害力は、災害が起きてから急に身につくものではありません。普段からの小さな経験、家族での確認、少しの不便を知る体験の積み重ねで育っていきます。非日常を少し体験しておくことは、特別な訓練ではなく、日常の延長にある防災です。
元消防職員として被災地派遣やLOの現場で強く感じてきたのは、災害時に人を支えるのは一気に身につけた強さではなく、平時から積み重ねてきた小さな慣れだということです。非日常体験は、その慣れを育てる大切な方法だと思います。
■まとめ|非日常を体験しておくことは、災害時に壊れにくい自分をつくる
非日常を体験しておくことは、防災においてとても意味があります。停電、不便な睡眠、限られた水や食事、情報の少なさなどを少しでも体験しておくと、災害時の不安が減り、判断が軽くなり、動きやすくなります。これは特別な訓練ではなく、耐災害力を育てる日常の工夫です。防災は物をそろえるだけではなく、心と体を少しずつ慣らしておくことも大切です。
結論:
非日常を体験しておくことは、災害時の不安を減らし、落ち着いて動ける耐災害力を育てる大切な防災です。
元消防職員として被災地派遣やLOの現場で感じてきたのは、災害時に強い人は、特別に強い人ではなく、少し不便な状況を知っていて、心が折れにくい人だということです。非日常を少し体験しておくことは、自分と家族を壊れにくくする大切な備えだと思います。

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