災害時のトイレ問題では、断水や簡易トイレの数ばかりが注目されやすいですが、本当に危ないのは「トイレに行けないこと」だけではありません。実際には、「行きたくない」「汚いから嫌だ」「夜が怖い」「列が長い」「家族に気を遣う」といった理由で、排泄を我慢してしまうことが大きな健康リスクになります。内閣府の資料でも、避難所でトイレが遠い、数が足りないなどの理由から食事や水分摂取を控える人が増え、その結果として脱水症、便秘、膀胱炎、脳梗塞、心疾患などの健康問題が生じたことが示されています。内閣府「多様な被災者への配慮とニーズ対応」
防災士として強く感じるのは、排泄を我慢することは「少しの不便を耐えること」ではなく、体をじわじわ壊す行動になりやすいという点です。被災地派遣や現場対応でも、困っていたのはトイレがない人だけではありませんでした。トイレはあるのに汚くて行きたくない、夜が怖くて行けない、周囲に気を遣って水分を控える。だから排泄我慢の問題は、トイレ設備の話であると同時に、健康・生活・心理の問題でもあります。災害時は「我慢できるか」ではなく、「我慢しなくて済むか」で考える方がかなり大切です。
■① 排泄を我慢すると最初に起きやすいのは“水分摂取の低下”である
災害時に排泄を我慢し始めると、多くの人は無意識に飲み物まで減らしやすくなります。「またトイレに行きたくなるのが嫌」「夜に起きたくない」「避難所のトイレが使いづらい」と感じると、水やお茶を控えやすくなります。厚生労働省の資料でも、避難所ではトイレに行くことを気にして水分摂取量を控える傾向があり、その結果、脱水症や深部静脈血栓症、熱中症、慢性疾患悪化のリスクが高くなると示されています。厚生労働省「避難生活で生じる健康問題を予防するための栄養・食生活について」
防災では、トイレ問題を排泄だけで考えがちです。ですが、実際には“飲まなくなること”の方が先に体へ効いてきます。だから、排泄我慢の健康リスクは、トイレだけの問題ではなく、水分を切らさないための問題でもあります。
■② 脱水はかなり静かに進みやすい
災害時の脱水は、汗をたくさんかいた時だけに起こるわけではありません。飲む量が少しずつ減り、食事量も落ち、排泄を我慢する生活が続くだけでも起こりやすくなります。しかも、避難所や在宅避難では緊張が続くため、本人が気づかないまま進むこともあります。
防災士として現場で感じてきたのは、災害時に体調を崩す人は、一気に悪くなるより“少しずつ飲まなくなる”人が多いということです。排泄を我慢することは、そのまま脱水の入り口になりやすいです。
■③ 排泄我慢は便秘や膀胱炎につながりやすい
排泄を我慢すると、便秘や膀胱炎のリスクも上がりやすくなります。特に女性、高齢者、子ども、持病のある人は影響を受けやすいです。内閣府の資料でも、トイレ回数を減らすために食事や水分摂取を控えた結果、便秘や膀胱炎などの健康問題が生じたとされています。内閣府「多様な被災者への配慮とニーズ対応」
元消防職員として現場で感じてきたのは、こうした不調は「命に関わるほどではない」と軽く見られがちですが、実際には生活の質を大きく下げ、さらに動く気力を奪いやすいということです。排泄を我慢することは、小さな不調を積み重ねやすいです。
■④ 高齢者では脳梗塞や心疾患リスクも意識した方がよい
高齢者が排泄を我慢して水分摂取を控えると、脱水だけでなく、脳梗塞や心疾患のリスクも高まりやすくなります。内閣府の資料には、避難所でトイレに行く回数を減らすために水分を控えたことで、脳梗塞や心疾患が生じた事例が示されています。内閣府「多様な被災者への配慮とニーズ対応」
防災士として実際に多かったのは、高齢者本人が「迷惑をかけたくない」と遠慮して我慢するケースでした。ですが、高齢者の排泄我慢は、単なる不快では終わらず、かなり大きな健康リスクへつながることがあります。ここは特に軽く見ない方がよいです。
■⑤ 子どもは失禁や水分不足につながりやすい
子どもは大人よりトイレを怖がりやすく、避難所や暗い場所、和式トイレ、汚れたトイレではかなり我慢しやすくなります。その結果、失禁したり、水分を控えたりしやすくなります。子どもは我慢を言葉でうまく説明できないことも多いため、周囲が気づかないまま状態が悪くなることもあります。
防災士として現場で感じてきたのは、子どもの排泄我慢は“トイレの問題”というより“不安の問題”であることが多いということです。だから、子どもには設備だけでなく、安心して行ける環境がかなり大切です。
■⑥ 女性は生理や防犯不安が重なって我慢しやすい
女性は、避難所での防犯不安、トイレの汚れ、生理中の交換のしにくさなどが重なることで、排泄そのものを我慢しやすくなります。特に夜間は「暗くて怖い」「行きにくい」という理由で、水分まで控えやすくなります。
防災士として実際に多かったのは、「夜はトイレに行きたくないから、夕方から飲まない」という行動でした。ですが、これは健康面でかなり危険です。排泄我慢のリスクは、設備不足だけでなく、防犯やプライバシーの不安ともつながっています。
■⑦ 排泄を我慢しないためには“トイレを清潔に保つこと”がかなり重要
排泄我慢を防ぐには、「我慢しないで」と伝えるだけでは足りません。実際には、トイレが清潔で、行きやすく、暗くなく、使い方が分かることがかなり重要です。内閣府の資料でも、避難所のトイレや洗面所の衛生を保ち、いつでも安心して使える環境を作ることは命を守ることに直結すると示されています。内閣府「多様な被災者への配慮とニーズ対応」
私は現場で、強い避難所や家庭ほど、「飲んでください」と言うだけでなく、我慢しなくて済むトイレ環境を作っていたと感じてきました。排泄我慢の対策は、気持ちの問題より環境の問題として見た方がかなり実用的です。
■⑧ 排泄我慢の健康リスクは“我慢できるか”ではなく“我慢させないか”で減らす
結局、排泄を我慢することの健康リスクで一番大切なのは、「本人が頑張る」ことではありません。近いトイレ、夜の照明、簡易トイレ、手洗い環境、清掃、声かけ、こうしたものを整えて、“我慢しなくて済む状況”を作ることです。
元消防職員としての被災地経験から言うと、助かった家庭や避難所は、「みんなで少し我慢した」所ではなく、「我慢させない工夫」をしていた所でした。排泄我慢の問題は、個人の気合いで解決するより、環境の整え方でかなり変わります。
■まとめ|排泄を我慢することの健康リスクで最も大切なのは“我慢しなくて済む環境”を先に作ること
排泄を我慢することの健康リスクは、脱水、深部静脈血栓症、便秘、膀胱炎、慢性疾患悪化、脳梗塞や心疾患まで幅広くつながり得ます。厚生労働省は、避難所でトイレを気にして水分摂取を控えることが脱水症や深部静脈血栓症などのリスクを高めると示し、内閣府は、トイレに行く回数を減らすために飲食を控えた結果、健康問題が生じたことを示しています。厚生労働省「避難生活で生じる健康問題を予防するための栄養・食生活について」
結論:
排泄を我慢することの健康リスクで最も大切なのは、本人に我慢を求めることではなく、清潔で行きやすいトイレ、夜間照明、簡易トイレ、水分を控えなくてよい空気を整えて、“我慢しなくて済む環境”を先に作ることです。
防災士としての被災地派遣や現場体験から言うと、最後に強い家庭や避難所は、我慢を美徳にした所ではなく、排泄を我慢させない仕組みを持っていた所でした。トイレ防災は、健康を守る防災です。

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