【元消防職員・防災士が解説】防災×老人ホーム|災害時に“職員が絶対に迷ってはいけない理由”

老人ホームの防災は、一般家庭より数倍むずかしい。
理由はただ一つ——“自力で逃げられない人が多いから”。
災害時、職員が一瞬でも迷えば、その数秒がそのまま入居者の命に直結する。

ここでは、職員が災害時に迷わないために必要な考え方と準備をまとめる。


■① 災害時の混乱は「迷い」から生まれる

地震・火災・水害など、災害は一瞬で施設全体を混乱させる。
特に高齢者施設では、以下の“迷いポイント”が命取りになる。

● 誰を優先して避難させるか
● どのルートで逃げるべきか
● 戻るべきか、避難し続けるべきか
● 火災か停電か、どちらの対応を先にするか
● 夜勤で職員1人の際、どこから動くべきか

迷うほど作業は遅れ、遅れた分だけリスクが増える。
老人ホーム防災の本質は「迷いをゼロにする準備」。


■② 避難優先順位を“平時から”決めておく

迷わないために最も重要なのは、事前の“優先順位づけ”。

● ベッド上で動けない人
● 医療依存度が高い人(酸素・吸引等)
● 認知症でパニックになりやすい人
● 移動に時間がかかる人
● 比較的自力で動ける人

一覧化しておけば、災害時に職員はただ順番に動くだけでいい。
これが「迷いゼロ」を実現する最大の防災技術。


■③ 職員の連携こそ、最大の命綱

老人ホームはチームで守る場所。
1人が完璧でも、連携が乱れれば全体が止まる。

● 火災時=誘導・通報・初期消火の役割分担
● 地震時=安全確認・負傷者チェック・情報収集
● 水害時=垂直避難の隊形づくり
● 停電=医療機器・照明・電源管理の担当を固定化

マニュアルではなく“体で覚えた連携”が命を守る。


■④ 夜勤帯でも動けるかが本当の実力

多くの施設の最大の弱点は「夜勤」。

職員1〜2名で数十人を守らなければならない。
この状況で迷えば対応は完全に止まる。

● 夜勤だけの訓練を定期的に実施
● 夜間は優先避難リストをさらに絞る
● 暗い環境でも動ける動線確保
● 夜間の火災想定で“秒で動ける”訓練

“夜勤で動けるかどうか”で、その施設の防災力が決まる。


■⑤ 在宅避難の判断も“迷いゼロ”が必要

大地震や水害では、外へ逃げるより施設内待機の方が安全なケースもある。

● 建物の耐震性
● 浸水想定
● 医療依存度
● 停電の長期化
● 交通途絶

これらを総合判断し、「外か、中か」を迷わず選べるようにしておく。
避難は“逃げる”だけが正しいわけではない。


■⑥ 災害初動行動は“3ステップ化”で迷いをなくす

老人ホームでおすすめの防災フローはこれ。

① 情報確認(地震・火災・水害の種類を把握)
② 入居者の安全確認(負傷・閉じ込め・火の発生)
③ 避難または屋内安全確保を判断

すべてを一気に考えるから迷う。
3つに分ければ、どの職員でも流れに沿って行動できる。


■⑦ 最後に|迷わない施設は“入居者を確実に守る施設”

老人ホームの防災は、職員の「判断力 × 準備力」で決まる。

● 優先順位
● 避難動線
● 夜勤体制
● 医療機器管理
● 在宅避難の基準
● 職員間の連携

すべてを平時から仕組み化すれば、災害時に迷うことはなくなる。

迷いがゼロの施設は、入居者の生存率が高い。
老人ホーム防災の極意は、
“考えるのは平時。動くのは災害時”
この一点につきる。

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