老人ホームにとって「停電」は、地震や台風よりも危険度が高い。
理由はシンプルで、電気が止まると高齢者ケアの多くが“即ストップ”するため。
特に医療依存度の高い入居者がいる施設では、停電=命の危険に直結する。
ここでは、老人ホームが必ず押さえておくべき“停電対策”をまとめる。
■① 医療機器が止まると命に関わる|まずは“最優先電源”を決める
老人ホームで停電が最も危険なのは、医療機器の停止。
● 酸素濃縮器
● 経管栄養ポンプ
● 吸引器
● 電動ベッド
● バイタル測定機器
これらが止まると、数分で生命リスクが高まる。
だからこそ、停電時は以下の順に優先度をつける必要がある。
① 生命維持に関わる医療機器
② 介助・介護に必要な機器
③ 生活維持のための設備(照明・給水・通信)
まずは「何に電気を使うか」を決めない限り、正しい対策はできない。
■② ポータブル電源は“複数台”が必須|医療+照明を両立させる
停電時に頼れるのは、大容量ポータブル電源+ソーラーパネル。
老人ホームでは1台では足りず、
● 医療用
● 照明・通信用
● 職員作業用
など、用途別に“3台以上”用意するのが理想。
また、以下は必須条件。
● 正弦波(医療機器が安定動作)
● 1,000Wh以上
● 急速充電対応
● ソーラーパネルで充電可能
医療機器を動かすためには、一般家庭よりも“数倍の電源体制”が求められる。
■③ 非常照明は“フロア全体”に|高齢者は暗闇で転倒しやすい
停電時の最優先は「光」。
高齢者は暗闇で転倒する確率が非常に高い。
● 廊下の足元灯
● トイレの自動点灯ライト
● 玄関・ロビーの誘導灯
● 充電式ランタンの常備
特に夜間の停電は、
● パニック
● 徘徊
● 職員への集中負荷
これらが一気に発生するため、光の確保が事故防止の鍵になる。
■④ 水とトイレを止めない|停電でも“生活を継続できる仕組み”が必要
停電で次に影響が出るのが「水」と「トイレ」。
● 給水ポンプの停止
● トイレの流せない問題
● 手洗い不可による感染リスク
対策は以下の通り。
● 施設内の非常用水タンク
● 除菌水の備蓄
● 簡易トイレ(入居者数×10倍)
● 手指消毒液の大量備蓄
老人ホームは一般家庭より“感染症が広がりやすい”。
停電中でもトイレと衛生環境を維持することが最重要。
■⑤ 通信を確保しなければ救急要請もできない
停電時に通信が止まれば、施設は孤立する。
● スマホの充電切れ
● Wi-Fi停止
● 固定電話停止
通信ができなければ、救急要請・家族連絡・職員招集すら不可能。
対策はシンプル。
● モバイルバッテリー大量備蓄
● 発電機 or ポータブル電源でルーターを稼働
● 職員間のLINEグループ・連絡網
● 予備スマホ・衛星通信端末(重要施設)
「通信=生命線」と考えるべき。
■⑥ 冬の停電は命に直結|暖房の代替手段を必ず用意する
高齢者は寒さに非常に弱い。
冬の停電で暖房が止まると、低体温症が一気に増える。
● カセットガスストーブ(転倒防止必須)
● 使い捨てカイロ
● 毛布・簡易寝袋
● 断熱カーテン・窓の目張り
特に夜間の冷え込みは危険。
“室温を10〜15℃以上に保てる備え”が必須。
■⑦ 職員体制が手薄になる夜間こそ停電を想定した訓練を
老人ホームで最も危ない停電は“夜間”。
職員が少なく、入居者は睡眠中で混乱しやすい。
● 最低人数での停電訓練
● 医療機器の代替運用訓練
● 暗闇での誘導訓練
● エレベーター停止時の役割分担
昼の訓練だけでは意味がない。
「夜間の停電を想定した訓練」が、事故防止に直結する。
■まとめ|老人ホームの停電対策は“命を守る準備”そのもの
老人ホームの停電は、一般の停電とは危険度が桁違い。
施設が備えるべき本質は次の通り。
● 医療機器が止まらない電源確保
● フロア全体の照明確保
● 水・トイレ・衛生環境の維持
● 通信の確保
● 冬の寒さへの対策
● 夜間を想定した訓練
停電は必ず起こる。
しかし、準備していれば“守れる命”は確実に増える。
入居者・家族・職員すべてを守るために、今日から施設の停電対策を強化してほしい。

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