災害対応は机上では完結しない。
実際の現場に立てる職員ほど、被災者の困りごとを理解し、必要な支援を的確に判断できる。
ここでは、自治体職員が絶対に身につけておくべき“現場対応力”をまとめる。
■① 現場を見る眼:被害を“数字でなく実態”として把握する力
現場に行けば、机上では分からないことが山ほどある。
● 道路が塞がり、そもそも救助に行けない
● 避難所の駐車場が足りず渋滞が発生
● 被災者の“言葉に出ない困りごと”
● 水害後の泥の量・におい・温度などの環境要因
被害の深刻さは机上の報告書では理解しきれない。
現地に立つだけで、判断精度が一気に上がる。
■② 住民の“本当のニーズ”を把握するスキル
災害時の住民は、困りごとをうまく言語化できないことが多い。
● 「大丈夫です」→本当は水とトイレが足りない
● 「平気です」→避難生活で体調悪化
● 「何とかします」→支援を遠慮している
現場では、“言葉より表情と環境を見る”ことが重要。
聞き取りではなく“察する力”が支援の質を決める。
■③ 各部署と現場をつなぐ“橋渡し役”の能力
現場を見た職員は、的確なフィードバックができる。
● 現場の不足物資を即伝達
● 避難所運営の改善点を行政に反映
● 福祉・土木・教育など各部署への具体的な指示出し
● 現場写真・動画を使った迅速な報告書作成
「現場 → 本部 → 現場」の流れが途切れない自治体ほど強い。
■④ 現場での安全管理スキル:職員自身が“被災者”にならない
職員がケガをすれば、自治体の機能が落ちる。
現場対応では、職員自身の安全確保が大前提。
● 危険個所への単独行動を避ける
● 水害現場は長靴ではなく胴長を使用
● ガラス・瓦礫への接触を避ける
● 頭部保護(ヘルメット)を徹底
● 低体温・熱中症の対策
“職員が守られてこそ、住民を守れる”という視点が重要。
■⑤ 避難所での即応コミュニケーション力
避難所では、ほんの小さな声かけが住民の安心につながる。
● 「何かお困りごとはありませんか?」
● 「寒さ・暑さは大丈夫ですか?」
● 「必要な支援があればすぐ動きます」
さらに、避難所トラブル(騒音・ペット・スペース)を早期に察知し、
“大きな問題になる前に”調整する力も必要。
■⑥ 災害ボランティアとの協働スキル
災害対応は職員だけでは回らない。
● ボランティアの役割分担を明確化
● 危険作業は絶対に任せない
● 作業エリア・作業内容の管理
● 住民とのトラブル防止の調整役
“ボランティアを生かせる職員”は現場で非常に評価される。
■⑦ 感情ケアの基本:被災者の心に寄り添う姿勢
避難所では、住民が強いストレスを抱えている。
● イライラ・怒り・不安は人間として自然
● まずは否定せずに聞く姿勢
● 感情の背景にある“困りごと”を探る
● 可能な支援を一つずつ提示
職員は“解決する人”ではなく“寄り添う人”であることが大切。
■⑧ 現場判断の優先順位付け:最も影響が大きい問題から動く
災害現場は、やることが山ほどある。
だからこそ“優先順位”が命を守る。
● 命に関わる問題
● 衛生・安全に関わる問題
● 長期化で悪化する問題
● 生活再建の妨げになる問題
この順番で判断すれば、支援の質が一段上がる。
■まとめ|現場を知る職員が自治体を強くする
災害対応は、机上ではなく“現地”に答えがある。
● 現場を見る眼
● 住民のニーズ把握
● 部署間連携
● 自分自身の安全管理
● 避難所コミュニケーション
● ボランティア活用
● 感情ケア
● 優先順位の判断
これらを身につけた職員は、災害時に無類の強さを発揮する。
自治体の防災力は“現場対応力のある職員の数”で決まると言っても過言ではない。

コメント