【元消防職員・防災士が解説】自治体職員に必要な“災害想定力”|被害を減らすのは「予測できる力」

防災の世界では、
「災害は起きてから考えるのでは遅い」
という言葉がある。

自治体職員に最も必要なのは、
“起こりうる災害を、どれだけ具体的に想像できるか”という想定力。

ここでは、災害想定力を高めるために必要な視点を解説する。


■① 気象情報を“流し見しない”|数字の裏側を読む力

自治体職員が最初に身につけるべきは、
気象情報の「読み取り力」。

● 大雨特別警報の基準
● 線状降水帯の危険度
● 土砂災害警戒情報の発表基準
● 台風の進路と暴風域の広がり方

これらを理解するだけで、
「あと何時間後に危険が来るか」を予測できるようになる。

気象情報を“見るだけ”ではダメ。
“意味を理解して判断に使う”のが職員の役割。


■② ハザードマップを“地図ではなく未来予想図”として使う

ハザードマップは、単なる地図ではなく
「災害時の未来図」。

● 浸水深の違いで必要な避難行動が変わる
● 土砂災害警戒区域の斜面勾配
● 津波想定の到達時間
● 避難所の危険度と収容可能人数

職員がハザードマップを“読み解ける”だけで、
住民に伝える言葉の説得力が圧倒的に変わる。


■③ 過去災害から“地域の弱点”を抽出する

災害想定力を高める最も確実な方法は、
過去の災害を分析すること。

● 過去の冠水ポイント
● 水が逆流したマンホール
● 通れなくなった道路
● 孤立した集落
● 避難が遅れた理由

過去の被害は、未来を予測するための“最高の教材”。
災害は違っても、弱点は同じ場所に現れる。


■④ “最悪のケース”と“現実的なケース”を分けて考える

災害の想定には2種類ある。

● 現実的に起こりそうなケース
● 起こり得る最悪のケース

この2つを混ぜてしまうと、判断がブレる。

例えば、
「最悪なら5m浸水、現実的には1m」
という地域なら、

● 現実的ケース=在宅避難は可能か?
● 最悪ケース=垂直避難が必要か?

といった具合に“分けて”判断することが重要。


■⑤ 夜間・停電・雨天・通勤時間…条件を変えてシミュレーションする

災害はいつ起きるかわからない。
だからこそ、

● 夜の0時に発生
● 通勤ラッシュ中に発生
● 停電時
● 高齢者が多い地区
● 保育園帰りの時間帯

など、“条件を変えたシミュレーション”が不可欠。

職員の想像力が、そのまま住民の安全率に直結する。


■⑥ 避難所の“弱点”を平時から想定しておく

避難所は、災害時に最もトラブルが起きやすい場所。
想定力が低いと、問題が一気に噴き出す。

● トイレの数は十分か
● 車中避難者との連携
● 多国籍家庭・障がい者の受け入れ
● 冬季の暖房
● 物資待ちの混乱

避難所は“問題が起きる前提”で準備する必要がある。


■⑦ “住民がどう動くか”を想定できる職員は強い

災害対応で難しいのは、
「住民がどう行動するか」の予測。

● 様子見で逃げ遅れる高齢者
● 車で避難し渋滞に巻き込まれる家庭
● ペット同行で避難所をためらう人
● Xの誤情報に惑わされる若者

ここまで想像して初めて、
本当に必要な避難情報を作ることができる。


■⑧ “行政の動きが遅れるポイント”も想定しておく

行政側にも弱点がある。

● 担当者不在
● 情報共有の遅れ
● 発信文がまとまらない
● 判断が分かれる
● 初動の指示が遅れる

これらを想定し、
「誰が」「どのタイミングで」「どの情報を出すか」
を決めておくことが職員の責任。


■まとめ|災害想定力は“住民の命を守る自治体の武器”

災害想定力とは、
「災害の未来を、どれだけ具体的に想像できるか」。

その精度が上がるほど、
● 住民の避難率が上がる
● 初動対応が早くなる
● 現場の混乱が減る
● 被害の拡大を防げる

自治体職員の“想像力”が、そのまま地域の防災力になる。

災害想定力は、地域を守るための最重要スキル。
今日から1つずつ磨いてほしい。

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