【元消防職員・防災士が解説】キャンピングカー避難の“最大の落とし穴”|長期避難で必ず直面する課題と対策

キャンピングカーは、災害時に「移動できる家」として大きな力を発揮する。
しかし、1週間以上の“長期避難”になると、ほぼ全ての家庭が同じ壁にぶつかる。
ここでは、実際の被災地の事例をもとに、長期避難で必ず直面する問題と、その対策をまとめる。


■① 物資が底をつく|水・食料・ガスは3〜5日で枯渇する

キャンピングカーは収納力が高いとはいえ、家族で生活すると備蓄の消費は早い。

● 飲料水が想像以上に減る
● 食料が単調になり、子どもが食べなくなる
● カセットガスはすぐ底をつく
● 調味料・塩・油が枯渇

特に「水」は命に直結するため、日数が伸びるほど深刻になる。

▼対策
・“車外にも”水20〜40Lを積む
・ガス缶は最低30本
・非常食+普段使いの食材のハイブリッド備蓄
・災害5日目以降は支援情報を毎日確認


■② 車内環境の悪化|湿気・匂い・温度が限界に

長期滞在すると、車内は以下のように急激に不快になる。

● 湿気で布団が濡れる
● 洋服が乾かない
● 生活臭がこもる
● 気温差による結露
● 赤ちゃんのオムツで臭気が強烈に

特に家族4人以上では、車内はたった数日で「小さな密室」と化す。

▼対策
・換気扇+小型USBファンで空気循環
・消臭袋(BOS袋)で匂いを管理
・結露対策に吸湿シート
・車外にタープを張り、活動スペースを広げる


■③ 排水・トイレ問題が限界を迎える

長期避難では「排水」「トイレ」が最も深刻な課題になる。

● キッチンの排水タンクがすぐ満杯
● トイレカセットが数日でパンパン
● 災害で処理できる場所がなくなる
● 不衛生が原因で体調を崩す

乳幼児・高齢者のいる家庭ほど負担が重い。

▼対策
・車のトイレは“非常用”にし、基本は携帯トイレ
・排水は極力出さない生活へ(ペーパー皿など)
・手洗いウエット・ドライシャンプーで水使用を減らす
・トイレタンクは早めに捨て場所を確保


■④ バッテリーが死ぬ|長期避難最大のリスク

サブバッテリーは使えば使うほど劣化し、充電が間に合わなくなる。

● ソーラーが曇天で機能しない
● 冷蔵庫が電力を大量消費
● 夜間の暖房・ライトで過放電
● スマホ充電が追いつかない

そして“バッテリーが死ぬ=車が動かせない”という致命的状態に陥る。

▼対策
・ポータブル電源を複数台
・折り畳みソーラーパネルで外部充電
・冷蔵庫は必要最低限だけ
・スマホは低電力モードで運用


■⑤ 家族のストレス増大|狭い空間の限界

車内生活が続くと、家族のストレスは想像以上に高まる。

● 子どもが騒ぎ、周囲の車から苦情
● 夫婦喧嘩が増える
● プライバシーがほぼゼロ
● 車内作業ができず親が疲弊

現場では、ストレス起因のトラブルが非常に多く報告されている。

▼対策
・日中は外で過ごす時間を増やす
・タープやチェアで生活空間を拡大
・夜はライトを落として“静かな時間”を確保
・子どものおもちゃ・塗り絵・カードゲームを常備


■⑥ 情報不足で支援を受け損ねる

長期避難ほど「情報」が重要になる。

● 給水開始を知らずに並び損ねる
● 食料配布を聞き逃す
● 入浴支援を逃す
● 医療支援の案内を見ていない

これらはすべて“実際にあった”トラブルだ。

▼対策
・1日1回は避難所に行って掲示板を確認
・自治体アプリとXで最新情報チェック
・隣の車と情報交換


■⑦ 長期避難は“車だけ”では限界がある

キャンピングカーは非常に強力な避難手段だが、
「車1台で長期間すべてを完結させる」のには限界がある。

必要なのは、

● 住(車)
● 水
● 電気
● トイレ
● 情報
● コミュニティ

これらを“車外の支援”と組み合わせて運用すること。


■まとめ|キャンピングカーは“強い”。ただし“長期戦を想定”せよ

キャンピングカー避難は、家族を守るための強力な選択肢。
しかし長期化すると、以下の課題が一気に押し寄せる。

● 水・食料・ガスの不足
● 車内環境の悪化
● トイレ・排水問題
● バッテリー死
● 家族のストレス
● 支援情報の不足

だからこそ、事前の準備とスキルが全てになる。

キャンピングカーは「逃げるための家」ではなく、
“使いこなす力”を持った人が最大限に活かせる防災装備だ。

家族を守るために、今日からできる準備をひとつ増やしてほしい。

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