日本は世界でも有数の「造船大国」。
そして私たちが住む日本は、地震・津波・台風・豪雨といった災害リスクが極めて高い国でもある。
この2つの分野は、一見無関係のようでいて、実は切っても切り離せない関係にある。
造船技術の進化は、そのまま“災害時の国の強さ”につながる。
ここでは、防災と造船がどのように結びつき、私たちの暮らしを守っているのかを解説する。
■■① 船は“最後のインフラ”。陸が壊れても海は生きている
巨大地震や津波で道路が寸断されても、
海上輸送だけは生き残る可能性が高い。
● 道路の倒壊
● 橋梁の損壊
● 土砂崩れによる通行不能
● 空港の閉鎖
これらが同時多発するのが日本の大規模災害。
そんな状況でも 船は動ける。
だからこそ、造船技術は“最後のライフライン”を支える重要な産業といえる。
■■② 造船業の技術が「災害支援船」を生み出す
近年、災害時に大きく活躍する船が増えてきた。
● 多目的支援船
● 病院船(ホスピタルシップ)
● 浮体式指令船
● 給電船・給水船
● 海上避難船(災害時の避難手段)
これらの船は、造船業の技術と知見が支えている。
特に 給電船(電気を供給できる船) は、
停電が長期間続く日本の災害では非常に重要な存在。
■■③ 病院船は“動く災害拠点”になる
大災害では、以下のように病院が機能不全になることがある。
● 建物の損傷
● 停電
● 医療スタッフの不足
● 物資不足
● 通行不能で患者搬送ができない
しかし病院船なら、
✔ 医療エリア
✔ 手術室
✔ 診察室
✔ 発電設備
✔ 飲料水製造装置
これらを船内に備えており、海上から被災地を支えられる。
世界では既に多数が運用されており、
日本でも導入が本格的に検討されている。
■■④ 造船技術は“災害用電力インフラ”にも応用されている
造船に必要な技術は、そのまま災害電源にも応用される。
● 大容量バッテリー
● 高効率発電システム
● 省エネ技術
● 耐震・耐塩害構造
特に海上で長期間稼働させるための技術は、
“停電に強い電力システム”の開発につながっている。
ポータブル電源や蓄電池の進化の裏側にも、
造船技術で培った電力管理のノウハウがある。
■■⑤ 造船産業は“地域の防災力”を底上げしている
造船所がある地域は、総じて災害に強い。
その理由は、
● 防災訓練が高度
● 大型設備・機材が揃っている
● 自治体と連携が強い
● 作業員が災害対応スキルを持つ
● 機動力の高い船がすぐ動かせる
「造船所=地域の危機管理拠点」
という側面を持つためだ。
災害時、自衛隊や消防より先に、造船所の船が動き出すことも多い。
■■まとめ|造船は“海の防災力”そのもの
造船は単なる産業ではなく、
日本を災害から守る“海の防災インフラ”だ。
● 陸のインフラが壊れても海は生きている
● 造船技術が災害支援船を生み出す
● 病院船は被災地の命を守る
● 電力インフラ技術にも応用される
● 造船所は地域の危機管理拠点
海に囲まれた日本にとって、
造船業の進化はそのまま“災害への強さ”に直結する。
これからの日本が巨大災害を乗り越えるには、
造船業を守り、活かし、連携を深めることが欠かせない。

コメント