【元消防職員・防災士が解説】防災×エネルギー安全保障②|“電力途絶に強い日本”をつくるための現実

巨大地震、台風、豪雨、噴火。
どの災害も、最初にダメージを受けるのは「電力インフラ」だ。

そして今、世界情勢の不安定化により、
災害+国際リスクが重なれば“長期停電”が全国で起こる可能性は十分にある。

防災とエネルギー安全保障は、
もはや切り離せない“ひとつの生存戦略”だ。

ここでは日本が抱える電力リスクと、
私たちが家庭レベルで備えるべきポイントを解説する。


■① 電力は「止まる前提」で考えないと危険

日本の電力は世界的にも安定している。
しかし、それは“平時限定”の話だ。

● 南海トラフ地震:広域停電は数週間〜数ヶ月
● 首都直下:都市インフラが一斉に機能停止
● 台風・豪雨:毎年のように変電所・送電線が被災
● 国際情勢:燃料が届かないと火力発電が止まる

電気が止まれば、
冷蔵庫・給湯・通信・医療機器・暖房…
生活のすべてが麻痺する。

“電力は止まるもの”として備えるのが、
これからの防災の基本だ。


■② 電力が止まると「水」「食料」「衛生」が連鎖して崩れる

停電が長期化すると、次の順に社会機能が落ちていく。

● ■1日目
・冷蔵庫が止まり生鮮食品が劣化
・スマホの電池切れ
・信号機が消えて交通混乱

● ■2〜3日目
・浄水場・下水施設の機能低下
・トイレの水が流れにくくなる
・ATM・レジが動かない

● ■1週間〜
・食料供給が滞る
・物流倉庫が停止
・病院が非常電源で限界

電力が止まる=生活が止まる
ということを、まず理解しなければならない。


■③ “集中型エネルギー”の限界|送電線が切れたらアウト

日本の電力システムは、
「巨大発電所→送電線→各家庭」という“集中型”。

災害時はこの仕組みの弱点が一気に露呈する。

● 送電線が倒壊
● 変電所が浸水
● 火力発電が燃料不足
● 電力会社のエリア間連携が弱い

つまり、

どこか1か所が壊れれば、広域停電が起きる構造

これを補うのが、以下で説明する“分散型エネルギー”だ。


■④ 分散型エネルギーが日本を救う

災害に強い社会は、
1つが止まっても他が動き続ける構造を持つ。

● 家庭用太陽光+蓄電池
● V2H(電気自動車の給電)
● 地域マイクログリッド
● 地域の小水力・地熱
● 蓄電池ステーション
● 避難所の独立電源

分散型エネルギーは、
「自分の家の電気を、自分の家で確保する」思想。

これはそのまま“命を守る力”になる。


■⑤ 家庭で必要な防災エネルギーはこの3つだけ

家庭が備えるべき電源は、実はシンプルだ。


●① ソーラーパネル(折りたたみ or 屋外設置)

・停電が長期化しても電源が再生される
・スマホ・通信を生かせる
・ポータブル電源を充電できる


●② ポータブル電源

・スマホ
・LEDライト
・小型家電
・医療機器(CPAPなど)

普段はアウトドアや車中泊にも使える。


●③ カセットガス/カセットコンロ

エネルギーの中で最も“確実”なのがカセットガス。
停電・断水・ガス停止でも使える最強の調理手段。

● ガスは1本=約1時間使用
● 3日分なら「20本以上」が安全ライン
● 寒冷地は“寒冷地用ガス”が必須

カセットガスは、日本中どこでも買えて災害に最強。


■⑥ 企業のエネルギー対策が地域の防災力を高める

企業のBCP(事業継続計画)で最重要なのが電源。

企業が電力を確保すると、

● 地域の雇用維持
● 物流停止の回避
● 医療・介護の支援継続
● 避難所への電源提供
● 地域コミュニティの維持

など、地域防災そのものになる。

特に“再エネ+蓄電池+非常用発電機”の複合対策は必須。


■⑦ まとめ|電力を失った国は“災害に負ける国”

エネルギー安全保障とは、
国を守り、地域を守り、家庭を守るための“実践的防災”。

● 電気は止まるもの
● 電力途絶は生活すべてを止める
● 分散型エネルギーが命を守る
● 家庭の電源確保は必須
● 企業の電源確保は地域を守る

電気があるかどうかは、
災害時の生存率を左右する“最大の要素”。

防災×エネルギー安全保障は、
これからの日本に最も必要な“国民全員の知識”である。

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