【元消防職員・防災士が解説】防災×マテリアル⑦|“火災に強い家”をつくる最新素材と安全設計

地震に続き、住宅火災は日本の大きなリスクだ。
特に停電復旧時の通電火災、倒壊した家屋の延焼、老朽住宅での火災は毎年多くの被害を生む。

近年は「燃え広がらない家」「初期火災で被害が拡大しない家」をつくるため、
建材・素材が大きく進化している。

ここでは、最新マテリアルがどのように住宅火災から命を守るのかを解説する。


■① “燃えにくい外壁・屋根材”で延焼を防ぐ

火災被害は「隣家からのもらい火」で一気に広がる。
これを防ぐため、外装材はより耐火性の高いものが選ばれ始めている。

● 窯業系サイディング(不燃処理)
● ガルバリウム鋼板(熱に強い金属)
● ALCパネル(軽量で断熱・耐火性が高い)
● 不燃コート材

これらは、

● 隣家の火災が燃え移りにくい
● 飛び火で外壁が着火しにくい
● 火災後の修繕範囲が小さくて済む

“延焼の連鎖を止める壁”は、住宅密集地では特に重要だ。


■② 内装材も“燃え広がらない時代”へ

屋内火災の被害を拡大させるのは、内装材の燃えやすさ。
そこで、火災時に炎を広げない内装素材が主流になってきた。

● 難燃クロス
● 石膏ボード(高温で強く、延焼を抑える)
● 不燃フローリング
● 難燃カーテン

これらにより、

● 初期火災の進行が遅くなる
● 逃げる時間が増える
● 煙の発生量が減り、視界の確保に役立つ

家族が安全に避難できる“数分間”を稼げるのが強み。


■③ 通電火災を防ぐ“電気系マテリアル”が進化

地震後の火災原因で最も多いのが通電火災
停電復旧の瞬間にショートし、家が燃え始めるケースが多い。

最新素材&機器はこのリスクを大きく減らしている。

● 感震ブレーカー(揺れで自動OFF)
● 難燃電線
● ショートしにくい絶縁素材
● 火花を抑えるコンセント

特に感震ブレーカーは、

● 避難中でも自動で電源OFF
● 在宅避難でも火災リスクが激減
● 高齢者だけの家庭でも安心

「揺れたら電気が止まる家」こそ、現代の防災住宅だ。


■④ 火災発生後の“煙ダメージ”を減らす素材

火災で最も命を奪うのは炎ではなく
そのため、煙の広がりを抑える技術が進化している。

● 気密性の高い防火ドア
● 隙間が燃え落ちにくい防火パッキン
● 延焼を遅らせる天井材
● 煙を遮断する吸着・抑制素材

これにより、

● 煙の侵入が遅れる
● 避難時の視界が確保されやすい
● 部屋が“安全ゾーン”になりやすい

火災では「時間と視界」が命の分かれ目になる。


■⑤ キッチン火災を防ぐ“高耐熱素材”

家庭火災で最も多いのがコンロ火災
最新キッチンは「火が広がりにくい素材」「熱に強い設計」が標準化されてきた。

● ガラス製トップ(衝撃・熱に強い)
● 不燃パネルのキッチン壁
● 焼損しにくい換気フード素材
● 自動消火機能付きコンロ

これにより、

● 油はね火災の拡大が抑えられる
● 高温による壁面着火が減少
● 調理中の不注意でも被害が最小化

日常の中の“火のリスク”を大幅に低減してくれる。


■⑥ 住宅火災後の“倒壊リスク”を軽減する耐熱構造材

火災は高温で構造材が弱り、倒壊リスクが高まる。
最新構造材は「燃えにくい+高温でも強度が落ちにくい」ことが特徴。

● 耐火特殊木材
● 耐熱鋼材
● 高耐火構造の接合金具
● 炭化しにくい表面処理

これにより、

● 延焼しても崩落しにくい
● 救助活動がしやすくなる
● 在宅避難の残存部分を確保できる

「燃えても倒れにくい家」は、避難・救助の成功率を大きく上げる。


■まとめ|火災対策は“素材選び”が命を守る

住宅火災は地震以上に“数分〜十数分”の勝負。
最新マテリアルはその時間を最大限に伸ばし、命をつなぐ役割を果たす。

● 延焼を防ぐ外壁
● 炎が広がらない内装材
● 通電火災を防ぐ電気素材
● 煙を抑える構造
● キッチンの耐熱設備
● 燃えても倒れにくい耐火構造材

火災は防ぐことができる災害。
“燃えにくい家づくり”は、家族の命を守る最も確実な防災投資だ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました