【元消防職員・防災士が解説】防災×防衛産業⑧|“通信車両・指揮通信車”が災害対応の頭脳になる理由

大規模災害では、まず最初に“通信”が壊れる。
携帯電話は圏外、光回線は断線、インターネットは不通。
この瞬間、行政も消防も警察も、正確な判断ができなくなる。

そこで圧倒的な力を発揮するのが、防衛産業の通信車両(指揮通信車)である。
災害現場の“頭脳”として機能し、各機関をつなぐ最重要ツールだ。


■① 通信が死ねば、防災そのものが止まる

災害時に最も壊れやすいライフラインは“通信”。
これが失われると以下がすべて止まる。

● 被害情報の収集
● 救急・救助の出動調整
● 行政から住民への避難情報
● 自衛隊・消防・警察の連携
● 物資・ボランティア・医療搬送

通信断=防災の中枢が停止するということ。
これを即座に復旧させるのが通信車両の役割だ。


■② 通信車両は“走る基地局”として機能する

通信車両には、高性能アンテナや衛星通信装備が搭載されている。

● 携帯基地局の代わりになる
● インターネットを復旧できる
● 災害本部と現場をリアルタイム接続
● ドローン映像を現場本部に転送
● 複数回線をまとめて安定化

つまり、通信車両1台で“被災エリアの通信”を丸ごと再建できる。


■③ どんな状況でも使える“衛星通信”

災害の種類によって通信は壊れ方が違う。

● 地震:地中ケーブルの断線
● 豪雨:基地局の浸水
● 台風:電柱倒壊
● 土砂災害:通信設備の流出
● 大規模停電:電気停止

こうしたどのケースでも、通信車両は衛星通信によって独自の回線を確保する。

地上設備が全滅してもつながるのが、最大の武器。


■④ 指揮通信車は“災害本部の代わり”にもなる

通信車両は、単なる通信装置ではなく“移動する災害対策本部”でもある。

● 大型モニターでドローン映像を分析
● 地図システムで被害の広がりを確認
● 伝令・無線・デジタル通信を一元化
● 各機関の司令塔として機能

特に広域災害では、自治体の庁舎が被害を受けることもある。
その際に「通信車両が本部になる」というケースは珍しくない。


■⑤ 住民への“避難情報の配信”を復活させる

通信車両が動くことで、避難情報も復旧する。

● 緊急速報メール
● エリアメール
● 防災アプリ通知
● 広報車との連携
● ラジオ送信の再開

通信が戻れば、住民の行動が一気に早くなる。
混乱を防ぎ、避難の質が劇的に向上する。


■⑥ 通信断は“二次災害”を招く

通信がない状態が続くと、次のような危険が増える。

● 避難が遅れて犠牲者が増える
● 救急・救助の手配ができない
● 医療ニーズを把握できない
● 孤立集落が見落とされる
● 物資輸送が二重化・遅延する

災害初動で通信車両が入れるかどうかで、被害の規模は大きく変わる。


■まとめ|通信車両は“災害の頭脳”を復活させる

通信は、防災のすべてを支える最後のライフライン。
それを最速で立ち上げるのが、通信車両・指揮通信車だ。

● 通信が戻る
● 情報が集まる
● 指示が出せる
● 救助が動く
● 住民が避難できる

通信車両は、被災地の混乱を止め、災害対応を再起動する“頭脳”そのもの。

被災者を守る最初の一手は、通信の復活から始まる。

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