【元消防職員・防災士が解説】防災×防衛産業⑨|“移動医療車(ドクターカー)”が災害現場の命を救う理由

大規模災害では、病院が機能不全に陥ることがある。
搬送が追いつかない、受け入れ先がない、医師が不足する。
この「医療空白」を埋める存在こそ、防衛産業が生み出した移動医療車(ドクターカー)だ。

災害現場に直接“医療機能”を持ち込むことで、多くの命が助かる。


■① 搬送できない“医療空白”を現場で埋める

災害初動では、負傷者が一度に大量に発生する。
しかしその多くは、すぐに病院へ運べない。

● 病院が満床
● 道路が寸断
● 救急車が足りない
● トリアージが追いつかない

この状況で最も犠牲が増える。
移動医療車は、その“空白”に直接入り込み、現場で治療を開始する。


■② 病院と同等の医療処置が可能

最新の移動医療車は、ほぼ“走る救急外来”。
内部には高度な医療設備が搭載されている。

● 心電図・超音波(エコー)
● 酸素投与
● 点滴・薬剤投与
● 外傷処置
● 搬送用ストレッチャー
● 除細動器(AEDの上位版)

大規模災害時の“初期治療の質”が格段に上がる。


■③ 医師・看護師を“現場に届ける”のが最大の価値

ドクターカーの本質は、
【医師や看護師を1秒でも早く現場へ届けること】
にある。

救命は「時間との戦い」。
病院に運ぶ前に、現場で命をつなぐ処置を始められるのが強い。

● 気道確保
● 心停止の蘇生
● 出血多量の止血
● ショックの防止

これらが遅れるか早まるかで、生存率が大きく変わる。


■④ 道路が寸断されても動ける“オフロード性能”

災害では道路が壊れ、普通車両は進めない。
そのため、移動医療車は以下の性能を持つ。

● 4WD・高トルクエンジン
● 停電エリアでも動ける電源搭載
● 災害用装備(ライト・無線)
● 狭い道を通れる設計

「医療が届かない地域」をなくすのが使命。


■⑤ 避難所に医療を持ち込む“巡回医療”にも使える

災害発生後、避難所では体調不良者が続出する。

● 持病の悪化
● 水・食料不足
● ストレス
● 低体温症
● 乳児のケア
● 高齢者の脱水・肺炎

移動医療車があれば、避難所に巡回しながら診療できる。
医療が届くことで、避難所生活の安全が格段に高まる。


■⑥ 災害時の“感染症対策”にも強い

車内は医療用の換気・空気管理がされており、
感染症のリスクが高い災害時でも安全に処置できる。

● 発熱者の隔離診察
● 感染症疑いの検査
● 人が密集する避難所での健康管理

“現場で完結する医療”は、災害時の新しい常識になりつつある。


■まとめ|移動医療車は“災害医療の前線基地”

災害では、病院が機能しない時間が必ず生まれる。
その空白を埋める最適解が移動医療車だ。

● 医療を現場に届ける
● 搬送できない人を救う
● 避難所の医療ニーズに応える
● 感染症リスクに強い
● 医師・看護師とセットで動く

“病院が動き出すまでの命綱”として、移動医療車は欠かせない存在。

被災地の救命率を上げる最強の装備のひとつである。

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