山の事故は「登り」よりも “下山時に圧倒的に多い”。
救助現場でも、転倒・滑落・道迷いの多くは下山中に発生している。
理由は明確で、
● 体力の消耗
● 集中力の低下
● 気のゆるみ
● 日没のリスク
が重なるタイミングだからだ。
下山は“帰り道”ではなく、災害リスクが最も高まる瞬間。
防災の視点で、下山時の事故を防ぐ方法をまとめる。
■① なぜ“下山が一番危険”なのか?
下山で事故が増える原因は4つの要因が重なるから。
● 足の筋力が弱って踏ん張れない
● 注意力が落ちて段差を見落とす
● 焦ってスピードが上がる
● 疲れて地図確認をしなくなる
平らな道でもつまずくのに、
下り坂で踏ん張れなければ転倒は一瞬。
下山は、災害でいう“二次被害の時間帯”に近い状態だ。
■② 下山の転倒・捻挫・滑落は“ちょっとした油断”で連鎖する
下山事故のほとんどは、
「段差についていけない足」から始まる。
● 歩幅を広げる
● 前傾になりすぎる
● 滑りやすい場所でスピードを落とさない
特に怖いのは、
一度つまずくと姿勢が崩れて止まれないこと。
防災で言えば、
“崩れ始めたら止まらない土砂崩れ”と同じ構造。
■③ 下山で道迷いが起きる“5つの典型パターン”
下山中は気持ちが“帰宅モード”に入り、判断力が鈍る。
道迷いの典型ケースは以下のとおり。
● 登りより広く見えて分岐を見落とす
● 下り坂でスピードが出て標識を通過
● 会話に夢中になり道を外れる
● 踏み跡が濃い獣道に入り込む
● 疲れてアプリ確認が面倒になる
疲労×油断×焦り=山の中で最悪の組み合わせ。
■④ 下山事故を防ぐ“歩き方の鉄則”
下山では歩行技術がリスクを大幅に減らす。
● 小股で歩く
歩幅を狭くするとバランスが安定する。
● 体重をかかとではなく足裏全体で受ける
衝撃を吸収し、滑りにくい。
● ポールは下降時こそ積極的に使う
2本あれば4点支持になり転倒リスクが激減。
● 歩くスピードを意図的に落とす
早歩きは事故の最大要因。
■⑤ 日没リスクは“下山時に集中する”という事実
救助の現場でも、日没間近の事故は非常に多い。
● 光量が落ちて足元が見えない
● 道が暗く見え分岐の注意力が下がる
● ヘッドライトを持たない人が多い
夕方の山は、災害でいう“危険度が一気に跳ね上がる時間帯”。
午後から登る場合は、下山時刻を厳守するのが命を守る基本。
■⑥ 下山中のケガは“動けなくなる”がもっとも危険
捻挫・骨折・打撲など下山時のケガが重い理由は、
動けなくなる=救助時間が長引くこと。
● 山頂付近
● 電波圏外
● 気温低下
● 体力消耗
これらが重なると、
小さな捻挫でも数時間で低体温症コースに入ることがある。
防災でも“救助までの時間を短くする工夫”が生死を分ける。
■⑦ 下山時に必ず守りたい“3つの行動”
下山事故を防ぐ最重要ポイントはシンプル。
① こまめに休憩する
疲労は集中力を確実に奪う。
② 分岐では必ず立ち止まる
登りより道迷いが増える時間帯。
③ ヘッドライトは早めに点灯
暗くなってから点けると間に合わない。
小さな行動が、大きな事故を確実に防ぐ。
■まとめ|下山は“帰り道”ではなく災害リスクが最大の時間帯
下山時は、
● 疲れ
● 焦り
● 油断
● 日没
● 判断力低下
が一気に重なる。
だからこそ、
登山の最重要フェーズは“下山”と言われる。
山の防災とは、
「最後まで安全に帰るための行動」ができるかどうか。
下山こそ、命を守るための最大の勝負どころだ。

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