【元消防職員・防災士が解説】防災×山の事故⑥|“初心者が最初に覚えるべき”山の危険予測スキル

山での事故は、経験不足よりも 「危険の予測ができないこと」 が大きな原因になる。
どんな装備より、どんな最新ギアよりも大切なのが “危険を先読みする力” だ。

ここでは、初心者でもすぐ使える「山の危険予測スキル」をまとめる。


■① “危険がある場所”は必ず決まっている

山で事故が起きやすいポイントは共通している。

● 濡れた木の根
● 岩場・ガレ場
● 崩落跡のトラバース
● 階段状の急な下り
● 沢沿いルート
● 細い尾根

この6つは、災害でいう「危険区域」と同じ。
まずは“事故が起きる場所を知る”だけで行動が変わる。


■② “視野が狭くなる瞬間”は事故のサイン

視野が狭くなる=危険の前兆。

● 疲れて足元しか見ていない
● 前の人に追いつこうとして焦っている
● 登頂直後で気持ちがゆるむ

こうした状態は、災害でいう「正常性バイアス」と同じ心理。
“自分は大丈夫”と思ったときほど注意が必要になる。


■③ 天気が変わる“30分前”の予兆を読む

山の事故の多くは天候悪化が引き金。
天気が急変する前には必ずサインがある。

● 急に風の温度が下がる
● 雲が速く動き始める
● 遠くの山が白くかすむ
● ガスが足元から湧き始める

これらは「30分以内に崩れる可能性が高い」合図。
防災でも“前兆に気づける人”が最も強い。


■④ 足が上がらない感覚は“一番危険な疲労”

初心者が見落としやすいのが、
「足がなんとなく重い」「段差が高く感じる」などの小さなサイン。

これは
● 集中力低下
● バランス悪化
● 転倒リスク上昇
の3つが同時に進む“危険疲労”。

この状態で無理をすると、
下山での転倒・滑落につながる。


■⑤ “戻る判断”ができる人が一番強い

山の危険予測スキルで最も大切なのが 撤退判断

● 天気が悪化
● 体調不良
● 道が分かりにくい
● 日没の可能性

この4つのどれかが重なったら、
“引き返す”が最も安全な行動。

災害でも同じで、
危険が増す環境では「無理をしない」が命を救う。


■⑥ 危険予測が上手い人ほど“ゆっくり・丁寧に歩く”

安全に強い人ほど歩き方が丁寧で、スピードも一定。

● 濡れた場所は一歩ずつ
● 岩場は足を置く位置を決めてから踏み込む
● 体力に余裕を持たせる
● 疲れたら迷わず休む

防災でも、ゆっくり・丁寧は“危険回避行動”の基本。


■⑦ 危険予測=経験ではなく“意識”で身につくスキル

初心者でも、次の3つを意識するだけで事故率は大幅に下がる。

① どこが危険か知っておく
知識だけで行動が変わる。

② 心と体が乱れているときは“歩き方”を丁寧にする
危険なときほどスピードを落とす。

③ 戻る勇気を持つ
撤退判断こそ最高の防災行動。


■まとめ|山の危険予測は“自分の未来に気づく力”

危険予測とは、
● 自分の体の変化
● 天気の変化
● 地形の変化
に気づき、“未来の危険”を先読みする技術。

防災の本質は、 「危険の一歩手前で止まる力」 にある。
このスキルを意識するだけで、山の事故は確実に減らせる。

山に行くすべての人が、今日から使える防災スキルだ。

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