山の事故は「登り」ではなく 下山で集中して発生 する。
体力・集中力・天候・地形のすべてが下山時に悪化するため、
“降りる技術”を持っているかどうかが事故率を大きく左右する。
ここでは、初心者でもすぐ実践できる「下山の防災スキル」をまとめる。
■① なぜ下山が危険なのか?事故データが示す“本質”
山岳事故の約7割は 下山中の転倒・滑落。
理由は非常にシンプル。
● 筋力・集中力が低下
● 足が上がらなくなる
● 日没が迫り焦りが出る
● 天候が変わる時間帯に重なる
● 急な下りでバランスを崩しやすい
防災でいう「二次災害のリスク増大」と同じ構造だ。
■② “疲れ始めた下山の最初の10分”が最も危険
登頂後にリラックスし、
身体が疲労モードに切り替わる最初の10分が事故のピーク。
● 足元の段差を見落とす
● 足が引っかかる
● バランスが取れない
この10分を丁寧に慎重に歩くだけで、事故リスクは大幅に下がる。
■③ 正しい下山フォーム|“重心を前に置かない”
下山で一番危険なのは、
重心が前に倒れて“前のめり”になること。
安全な下山フォームは以下の通り。
● 膝を軽く曲げる
● かかとから静かに着地
● 歩幅を小さくする
● ストックは体の横の位置でバランス補助
● 荷物は体の中心に寄せる
小さな歩幅=大きな安全。
■④ 斜面ごとの危険ポイントを把握する
地形で危険度は大きく変わる。
【ガレ場】
→ 小石が転がると滑りやすい。足を置く位置を決めてから踏み込む。
【木の根】
→ 濡れていると“油を塗ったように滑る”。根を跨ぐより、隙間に足を置く。
【階段状の下り】
→ 一段ずつ丁寧に。疲れていると段差の高さを誤認する。
【泥斜面】
→ つま先を少し内側に向け、“八の字”で慎重に降りる。
地形を読む力は、防災でいう「地形災害の理解」と同じ。
■⑤ 下山こそ“天気を読むスキル”が重要
下山は天候悪化のタイミングと重なることが多い。
● 風向きが変わった
● 雲が速くなった
● ガスが湧き始めた
● 光が弱くなった
これらは“天候急変の予兆”。
30分以内に崩れる可能性が高いため、休憩を減らし早め行動に切り替える。
■⑥ 疲労状態は“早めに可視化”する
初心者は疲労に気づくのが遅れる。
ここを放置すると事故につながる。
疲労サインは以下の通り。
● 足が上がらない
● つまずく回数が増える
● 息が上がりやすい
● 集中が切れて景色ばかり見てしまう
この状態になったら、
迷わず“こまめな休憩+水分・糖分補給”を行う。
■⑦ 下山の危険を下げる“3つの行動ルール”
下山で命を守る行動は非常にシンプル。
① 歩幅を小さくする
安全性が一気に上がる。
② 危険場所は“一歩ずつ”確実に
ガレ場・木の根・段差は特に慎重に。
③ 体力を余らせて降りる
限界ギリギリで歩かない。
“余力が残っている状態”が最も安全。
■まとめ|山の事故の核心は「降りる技術」にある
山は登るより、降りる方が圧倒的に危険。
その理由は、防災の本質と同じ。
● 疲労
● 判断低下
● 視界の悪化
● 焦り
● 地形変化
● 天候変化
これらが一気に重なるのが“下山”だ。
安全に降りる力=命を守る防災スキル。
初心者こそ、“ゆっくり丁寧な下山”を徹底してほしい。

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