【元消防職員・防災士が解説】防災×ペット×感染症⑤|災害時に“複数ペットを守る家庭”が必ず知っておくべきポイント

犬や猫を複数飼っている家庭は、災害時の難易度が一気に上がる。
避難行動、感染症対策、ストレスケア、避難所でのルール順守——すべてが“1匹とは別物”になる。

ここでは、複数ペットを安全に守るための実践的ポイントをまとめる。


■① まず「分散」か「一括」かを決めておく

複数ペットは、以下の判断が極めて重要。

● まとめて1つのケージに入れるのか
● 1匹ずつケージを分けるのか
● 家族が複数いる場合は誰がどのペットを担当するのか

基本は1匹につき1ケージが鉄則。
感染症、ケンカ、ストレスを避けるためには“分ける”ことが最も安全。


■② ケージは“同じタイプ”を揃えると避難が格段に楽になる

複数ペットを連れて避難する際は、備品の統一が圧倒的に有利。

● サイズ・構造・開閉方法を統一
● 重ねやすいタイプを選ぶ
● 肩掛けベルトを付けられるものが便利
● 布カバーも同じ仕様にしておく

避難所の限られたスペースでは「まとめて管理できるか」が命を守るポイント。


■③ 災害時は“ペット同士の関係が崩れる”ことを前提にする

普段仲良しでも、災害のストレスで関係が崩れることは珍しくない。

● 些細な刺激でケンカ
● 不安で甘噛み・威嚇
● 逃走行動
● 食欲の争奪

特に犬×猫、オス同士、シニア×若い個体などは要注意。
災害時は「仲良し」が必ずしも安全ではない。


■④ ストレス管理は“個別ケア”が必須

複数飼い家庭ほど個別のストレス対策が重要。

● 落ち着く毛布やにおいのついたタオルを1匹ずつ
● 飼い主とのスキンシップも平等に
● 食事時間をずらして与える
● 無理に一緒に遊ばせない
● 視界を遮るカバーを使う

避難所では周囲の音・人・光が刺激になるため、小さなケアが大きな安心につながる。


■⑤ 感染症リスクは“1匹の体調不良が全員に広がる”と理解する

複数ペット家庭の最大のリスクは共通感染。

● ノミ・ダニ
● ウイルス性疾患
● 下痢・嘔吐の感染
● 皮膚炎の拡大
● 水皿・食器の共有による感染

必ず次を徹底:

● 食器・トイレは個別
● 水は共用しない
● 下痢・嘔吐が出たら即隔離
● タオル・毛布を共有しない

“1匹の異常=全員の危機”という感覚が重要。


■⑥ 避難所との調整は“早めの申告”がカギ

複数ペットを連れている家庭は、避難所でも特別な配慮が必要になる。

● 早めに「複数います」と伝える
● ケージの配置を相談
● 隔離スペースが必要な場合は先に申告
● スタッフに体調の変化をこまめに報告

後から伝えるとトラブルになりやすい。
“先に動くこと”がスムーズな受け入れにつながる。


■⑦ 家族内で“担当制”を決めておく

複数ペットはリソースが分散するため、家族で役割分担が必須。

例:

● Aさん:犬①、移動と餌
● Bさん:犬②、排泄処理
● Cさん:荷物管理と情報収集

役割を明確にすることで、どのペットも取り残されない。


■⑧ ペット用品は“軽量化・コンパクト化”が鍵

複数ペット分を持ち運ぶと荷物が膨大になる。

● 折りたたみケージ
● ペットシート圧縮
● 軽量バリカン・簡易ブラシ
● コンパクトペットフード
● 防臭袋の大容量ロール

“持ち運べる量”を基準にアイテムを見直すことが大切。


■まとめ|複数ペット家庭の防災は“分ける・統一・早めの行動”

複数ペットを守る防災の鉄則:

● ケージは1匹1つ
● 備品は統一して管理
● 仲良しでも分ける前提
● 感染症リスクは倍増する
● 避難所への申告は早めに
● 家族で担当を決めておく
● 荷物は軽量コンパクト化

複数ペットを守ることは大変だが、準備と工夫で安全性は大きく高まる。
大切な家族だからこそ、“今日できる備え”を一つずつ積み重ねてほしい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました