【元消防職員・防災士が解説】防災×ペット×感染症⑥|避難所で“ペットと安心して過ごすための衛生管理術”

災害時、避難所は人もペットもストレスが最大化する特殊な環境になる。
特に感染症は、ペット自身だけでなく周囲の人間にも影響するため「衛生管理」が安全の鍵を握る。

ここでは、避難所でペットと安心して過ごすための実践的な感染症対策をまとめる。


■① 避難所到着後“最初の10分”でやること

避難所に入ったら、まずは次を行う。

● ケージの外側を一度拭く
● ペットの身体チェック(目・鼻・口・ウ○チの状態)
● 他のペットとの距離を確保
● 排泄の場所を確保しておく

この“最初の10分”で、感染リスクの8割は下げられる。


■② ケージは「入口を人に向けない」配置が安全

避難所でのトラブルの大半は動物の興奮とストレスから起こる。
そのため、ケージは次の配置が鉄則。

● 壁側に向ける
● 人の行き来が多い通路に背を向けて置く
● 他のペットと正面を向けない
● カバーで視界を遮断

これだけで余計な飛沫・接触・騒音ストレスを減らせる。


■③ ペットの排泄物は“即密閉”が必須

避難所で最も迷惑をかけやすいのが臭いと衛生問題。
特に複数ペットの場合、感染源になりやすい。

● 排泄物は防臭袋に即密閉
● ウェットシートで床を拭く
● トイレ砂・ペットシーツは多めに持参
● 尿は吸収パッドで覆ってから捨てる

周囲に迷惑をかけないことは、安全に居続けるための“最大の防災”。


■④ 他の避難者・ペットとの接触は“最小限”が正解

災害時は免疫力が低下し、ちょっとした接触でも感染が広がりやすい。

● 他の犬を近づけない
● 子どもに触らせない
● ペット同士を遊ばせない
● おすそ分けの食べ物は絶対NG

可愛がりたい気持ちは分かるが、非常時は“距離を保つ”が最優先。


■⑤ 水皿・食器の共有は厳禁

避難所では「つい共有しがち」な場面があるが、感染症リスクは高い。

● 食器は必ず個別
● 洗わずに使い回さない
● 食後はペーパーで拭いてから密閉袋へ
● 濡れたまま放置しない

食器が清潔に保てているだけで感染リスクは大幅に減る。


■⑥ 毛布・タオルの共有もNG

ウイルス・細菌・寄生虫は布で簡単に移る。

● 1匹ずつ別の毛布
● 洗濯できない場合は乾燥させる
● 濡れタオルはすぐ交換

互いのにおいで安心することはあるが、非常時は感染予防を優先。


■⑦ “体調チェックのリスト”を作っておくと安心

避難所で体調を崩すペットは多い。
毎日次の項目をチェックするだけで異変に早く気づける。

● 食欲があるか
● 水を飲んでいるか
● 便の状態(軟便・下痢)
● 目やに・鼻水
● 皮膚の赤み
● 咳・くしゃみ
● 嘔吐の有無

どれか1つでも普段と違えば「隔離」が必要になる。


■⑧ 体調不良が出たら“すぐ避難所スタッフに相談”

ペットの体調変化は避難所全体に影響する。

● 咳・下痢・嘔吐は隔離が必要
● スタッフの判断で別室を案内されることも
● 必要なら近隣の動物病院へ移動

隠すと感染が広がり、結果としてより不利な状況に追い込まれる。


■⑨ 避難所での感染症は“人にも移る”ことを忘れない

ペットの感染症の中には人間に移るもの(人獣共通感染症)もある。

● ノミ・ダニ媒介感染症
● 真菌(皮膚病)
● 消化器系の感染

飼い主自身の健康も守るために、衛生管理は最優先で徹底する。


■まとめ|ペットを守る防災は“衛生管理”がすべての土台

避難所でペットを安全に守るには、次が鉄則。

● 到着10分でケージ・体調チェック
● ケージは壁向きで視界を遮断
● 排泄物は即密閉して処理
● 他の人・ペットとの接触を最小限
● 食器・毛布の共有禁止
● 体調チェックを毎日
● 異変があれば早めに相談

ペットは自分で身を守れない。
飼い主の行動が、命を守る“最後の砦”になる。

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