【元消防職員・防災士が解説】エレベーター火災の危険性と“絶対に守るべき避難行動”

建物火災が発生すると、エレベーターは最も危険な場所のひとつになる。
理由は「煙」「熱」「停電」の3つが一度に襲ってくるからだ。
ここでは、火災時にエレベーターがなぜ危険なのか、そして確実に命を守る行動を解説する。


■火災時にエレベーターが“致命的に危険”な理由

① 煙が最速で流れ込む構造

エレベーターのシャフト(昇降路)は、建物の最上階まで“縦に貫通”している。
火災時は煙突のように煙が一気に上昇し、
わずか数十秒でカゴ内を充満させる。

煙を吸えば数分で意識を失う。
エレベーター内は避難空間ではなく“急速に危険化する空間”。


② 停電・熱による“停止リスク”

火災では、熱によるケーブル損傷・ブレーカー遮断などで停電が起きやすい。
動いている最中に停止すれば、
● 高所で閉じ込め
● 煙侵入の増加
● 救助まで長時間

命を落とすケースも実際に起きている。


③ 扉が開かない・開いても炎の近く

火災時は安全装置が誤作動したり、煙でセンサーが働かず、
扉が開かない・意図しない階で開く
など不規則な動作をする。

開いた先が火元階という最悪の事態もある。


■火災時の“正しいエレベーター行動”

① 火災を感じたら絶対に乗らない

におい、火災警報、煙の発見。
少しでも火事の可能性があるなら、
エレベーターは全面禁止。

これは世界共通の避難鉄則。


② 乗っている時に火災を知ったら“最寄り階で降りる”

非常ボタンを押し、できるだけ早く降りる。
その後は
● 片手で口鼻を覆う
● 姿勢を低くして移動
● 非常階段で避難

煙から距離を取ることが最優先。


③ 階段が使えない時の判断

炎の流れや煙の動きで階段が塞がれることもある。
その場合は、
● 炎の反対側に移動
● 扉の隙間を濡れタオルで塞ぐ
● 外へ通報、助けを待つ

無理に突破するのは危険。


■高層マンション住民が準備すべきこと

火災時は高層階ほど逃げにくい。
だからこそ“平日の準備”が命を守る。

● 避難階段のルートを必ず把握
● 非常口・避難ハッチの位置確認
● 夜間でも行動できる照明(ヘッドライト)
● 防煙フードの備え
● エレベーター前に集まらない習慣

エレベーター依存の生活ほど火災リスクは高い。


■商業施設・病院・ホテルでのポイント

● 人が多い施設ほど煙が広がる速度は速い
● 誘導に従うのが最善
● ホテル宿泊時は階段位置を必ずチェック
● 病院はスタッフが避難誘導マニュアルを持つ

“場所が変われば避難も変わる”を意識しておく。


■まとめ

火災時のエレベーターは、
「最も危険な場所」
であり、避難には絶対に使わないのが鉄則。

● 乗らない
● 気づいたら最寄り階で降りる
● 煙から離れる
● 階段で逃げる

この4つを知っているだけで、生存率は大きく変わる。
火災は“数分の判断”で命が決まるからこそ、
日常から正しい知識を身につけておきたい。

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