【元消防職員・防災士が解説】防災行政無線×ドローン⑦|“広域災害で使える”空と地上のハイブリッド情報伝達

広域で同時多発的に被害が出る災害では、地上の防災行政無線だけでは情報が届かない地域が必ず発生する。
倒木・停電・水害・通信障害が重なると、従来のスピーカー広報だけでは限界がある。

そこで注目されるのが、ドローンを活用した“空と地上のハイブリッド防災広報”。
広範囲・多方向・ピンポイントの3つを同時に実現できる、次世代の住民支援システムになる。


■① 停電・浸水で行政無線が機能しない地域を補える

広域災害では、行政無線の機器自体が故障・冠水・停電するケースが多い。

● スピーカー塔の故障
● 通信ケーブルの断線
● 停電で制御システムがダウン
● 浸水による設備停止

ドローンなら、これらの影響を受けずに上空から広報できる。

「地上が死んでも、空から届ける」
これがハイブリッド防災の大きな強み。


■② 避難指示の“漏れ”を防ぐための上空カバーが可能

地上スピーカーでは、地形による遮音・建物影響で届かない地域が必ずある。

● 山間部の集落
● 高層マンションの影
● 大型商業施設の周辺
● 工場地帯の広い敷地

ドローンは上空から広報するため、
これまで届かなかった“音の空白地帯”を埋められる。


■③ 広域の火災・浸水状況を即座に把握し、伝達に反映できる

単なる広報だけでなく、ドローンは状況把握にも役立つ。

● 河川の複数箇所の水位を空から確認
● 工業地域での化学火災の拡大状況
● 同時多発の土砂崩れの有無
● 広域停電エリアの特定

把握 → 広報
が同じツールでできるので、情報伝達のスピードが段違いになる。


■④ 地上スピーカーとドローン広報の“役割分担”が効果的

ハイブリッド防災は、役割分担がポイントになる。

● 地上スピーカー
 → 日常の定時放送、訓練、定期情報
● ドローン
 → 緊急性の高い避難指示、危険地域の限定広報

「地域全体へ一斉」では地上、「危険エリアへピンポイント」ではドローン。
この組み合わせが最も効率的。


■⑤ 避難誘導が“空と地上の両方から”行える

地上だけでは避難ルートが見えないことが多い。
しかし、ドローンが空から誘導することで住民は安心して動ける。

● 危険な道路の把握
● 進入可能なルートの提示
● 避難所までの安全な導線
● 避難行動中の変更案内

上空からの誘導は、夜間や濁流時でも特に効果が高い。


■⑥ 自治体・消防・防災担当の“現場負担を減らす”効果も大きい

広域災害では、職員のマンパワーが不足しがち。
ドローンの広報機能を使うことで、人的負担を大幅に削減できる。

● 広報に人を割かず、救助・消防に集中できる
● 危険な現場に職員が近づかなくて済む
● 空からの映像で状況判断が早まる

自治体のオペレーションも劇的に効率化される。


■まとめ|広域災害では「地上+空」が必須。ハイブリッド防災が住民を守る

防災行政無線だけでは、これからの巨大災害には対応しきれない。

ドローンを加えることで、

● 届かなかった地域に情報が届く
● 広域状況を即座に把握できる
● 避難誘導が正確になる
● 住民の行動が早まる

“地上の広報 × 空の広報”は、
防災の常識を変える次世代モデルになる。

住民に確実に情報を届け、行動を促すための最強セット――
それが、防災行政無線とドローンのハイブリッド運用だ。

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