【元消防職員・防災士が解説】防災行政無線×ドローン⑨|災害時の“捜索力”を底上げする新しい空の目

地震・豪雨・土砂災害――
大規模災害が起きたとき、最も重要なのが「人を見つけるスピード」。
一刻を争う場面で、地上だけの捜索では限界がある。

そこで大きな力を発揮するのが、
防災行政無線の広報機能と、ドローンの捜索能力を組み合わせたハイブリッド運用だ。


■① 上空から“広域捜索”できる圧倒的な強み

地上の捜索では、

● 土砂で道が寸断
● 水没して近づけない
● 建物が倒壊して視界ゼロ

と、どうしても限界がある。

ドローンなら、

● 広い範囲を短時間で上空から確認
● 人影・車両・救助を求めるサインを発見しやすい
● 道路が使えない場所にも安全に接近

という“広域×高精度”の捜索が可能。

地上で1時間かかる範囲を、数分で確認できることも珍しくない。


■② サーモカメラで“人の熱”を捉える

夜間や悪天候でも、ドローンのサーモカメラは大活躍する。

● 倒壊家屋の隙間
● 濁流の中
● 広い森林地帯
● 深夜の屋外

こうした場所でも「人の熱」を視覚化できる。

特に、土砂崩れや夜間の河川周辺は地上では危険を伴うが、
上空からなら安全に探索できる。


■③ 防災行政無線と連動すれば“見つけたら即伝達”が可能

ドローンで発見 → 情報の共有 → 行政無線で広報
この流れを一体化させることで、救助のスピードが劇的に上がる。

例えば、

● 救助班へリアルタイム映像を送信
● 危険区域に近づかないよう住民へ音声広報
● 捜索対象の特徴を周辺エリアへ拡散
● 避難誘導をその場で上空から実施

“発見の瞬間に動ける体制”になるのが最大の強み。


■④ 二次災害のリスクを下げながら捜索できる

大災害後の現場は、二次災害のリスクが非常に高い。

● 地盤の緩みで再度の崩落
● 洪水で足を取られる
● 倒壊家屋の危険
● ガス漏れ・感電のリスク

救助隊が無理に近づけば、命を落とす危険がある。

ドローンを使えば、

● 人が入れない区域の確認
● 危険箇所を把握し安全なルートで接近
● 救助隊への情報提供

と、安全に捜索活動を進めることができる。


■⑤ 行政無線の弱点「場所の特定」がドローンで補える

行政無線は“エリア全体”に向けて情報を流すのが得意だが、
「ピンポイントの場所特定」が苦手。

そこでドローンを使うと、

● 発見地点をGPSで即特定
● 操作画面に地図情報を重ねて表示
● そのまま救助隊に位置データを共有

という精度の高い運用が可能になる。

「どこにいるのか分からない」
という時間のロスをゼロに近づけられる。


■⑥ SNS・アプリとの連携で“住民の目”も生かせる

捜索の中で最も強い情報源は「住民の目」。

ドローンで撮影した映像を自治体アプリやSNSと連携すれば、

● 行方不明者に関する住民提供情報のマッチング
● 現場近くの住民へピンポイント通知
● ドローン映像を基にした迅速な情報拡散

が可能になる。

防災行政無線 × ドローン × 住民
この三位一体で、探索能力は何倍にも向上する。


■まとめ|“空からの捜索力”は自治体の未来資産

これからの捜索は、
「地上の人力」だけでは限界を迎える。

ドローンを投入すれば、

● 広域を短時間で捜索
● 夜間でも熱源で発見
● 行政無線と連動して即広報
● 二次災害リスクを大幅に低減
● 位置情報の精度向上

など、災害現場の弱点を一気に補える。

自治体が持つ“空の目”は、
行方不明者の生存率を確実に押し上げる防災力そのものだ。

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