【元消防職員・防災士が解説】災害時の“食物アレルギー対応”で必ず知っておきたい避難所の実情と対策

食物アレルギーを持つ家族にとって、避難所は決して安全な場所とは言えない。
むしろ、情報不足・混雑・アレルゲン混入など、普段より危険が増える場面が多い。

ここでは、避難所で起こりやすい“現実のリスク”と、その対策をまとめる。


■① 避難所の食事は“成分が分からない”ことが最大のリスク

炊き出しや配給食は、原材料の詳細が分からない場合が多い。

● 「卵・乳・小麦」が使われていてもわからない
● 大鍋で一括調理 → アレルゲン混入の可能性
● 手作りの差し入れは成分不明で最も危険
● ボランティアが“アレルギー特定原材料”に詳しいとは限らない

特にパン・おにぎり・スープ類はアレルギー源が紛れやすい。

避難所では「出されたものを食べるのが当たり前」ではなく、
“安全を確認してから食べる”が命を守る基本になる。


■② 配布スピードが早いと、子どもが勝手に受け取ってしまう

大規模避難所では、食料の配布が一気に行われる。

● 子どもが列に並んで勝手に受け取る
● 周囲の子どもにつられて食べてしまう
● ボランティアがアレルギーを把握していない
● 大人の目が届かない時間帯ができる

これは災害時に最も多い事故パターン。

対策は明確で、

● 避難初日に“アレルギー表示カード”を配布側に渡す
● 子どもに「何か食べる前に必ず大人へ確認」と約束
● 手元に“安全に食べられる非常食”を常備

この3つが揃っていれば、リスクは大幅に下がる。


■③ ストレス・疲労でアレルギー症状が出やすくなる

避難生活は、子どもに強いストレスを与える。

● 寝不足
● 気温差
● 他人の声・物音
● 環境の変化
● 食事が不安で食べられない

これらが重なると、アレルギー症状が通常より出やすくなる。

特に乳幼児は「お腹が痛い」「喉がかゆい」などをうまく言えないため、
小さな変化も見逃さない観察が必要。


■④ 避難所スタッフに“最初に伝えるべきこと”を整理する

避難所は常に人手不足で、情報が共有されないことも多い。

初日に伝えるべきポイントは以下のとおり。

● 食物アレルギーがあること
● 食べられない具体的な食材
● 代わりに持参している食料
● 症状が出たときの対応方法
● エピペンの有無

“伝えたつもり”ではなく、
“伝わったかどうか”を確認するのが重要。


■⑤ アレルギー対応食を備蓄している自治体はまだ少ない

実は、全国的に見てもアレルギー対応食の備蓄は進んでいない。

● 数が限られている
● 内容が偏っている
● 子どもが食べ慣れていないものが多い
● 乳幼児向けの対応は特に遅れている

だからこそ家庭の備蓄が“最後の砦”になる。

安全な食料は、最低1週間(できれば2週間)を目安に揃えておくべき。


■⑥ 調理スペースの衛生環境も注意が必要

避難所の調理環境は理想的ではない。

● まな板や包丁が使い回される
● 洗剤や水が不足
● 調理担当が日替わりで変わる
● 忙しさと混乱で細かな配慮が難しい

これはアレルゲン混入(コンタミネーション)が発生しやすい状況。

子どもの食事は、
● 自宅で用意した安全なレトルト
● 個包装食品
● アレルギー対応の非常食
を優先するのが安心。


■⑦ 他の避難者とのトラブルを避けるためにも事前準備が重要

避難所では、さまざまな事情を抱えた人が集まるため、
アレルギー対応が誤解を生むこともある。

● 「あの子だけ特別扱い?」
● 「配慮してもらうのが当たり前なの?」
● 「差し入れのお菓子も食べないの?」

こうしたトラブルを防ぐには、

● 子どもの食事は“自前で完結”できるよう備蓄
● 周囲に迷惑をかけない行動
● 寄付食品を無理に受け取らない

この姿勢が、結果として家族を守る。


■まとめ|避難所でアレルギー事故を防ぐには“家庭の準備”がすべて

避難所の食事は、多くの大人にとっては「温かくて助かるもの」。
しかしアレルギーのある子どもにとっては“命のリスク”になり得る。

守るために必要なのは、

● 安全な非常食を自宅に十分備蓄
● 避難初日にしっかり申告
● 子どもと事前にルール共有
● ストレス軽減の工夫

今日の準備が、災害時の“取り返しのつかない事故”を防ぐ。
家族の命を守るのは、平常時の行動だけだ。

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