【元消防職員・防災士が解説】防災×ラストエリクサー症候群③|“非常用アイテムを使えない心理”が生存率を下げる

災害現場を経験してきた立場から断言できるのは、
「あるのに使わない」が、最も危険な行動パターン
だということ。

非常食、水、モバイルバッテリー、簡易トイレ、防寒具…
これらは“最悪の時に使うために備えている”はずなのに、
実際の災害では驚くほど多くの人が温存してしまう。

これはまさに、
ラストエリクサー症候群(最強アイテム温存癖)
この記事では、防災アイテムを使えない心理の正体と、
どう克服するかを解説する。


■ ① 人は「最悪の事態」を想像しすぎて動けなくなる

災害時、人はこう考えがちだ。

● 今はまだ大丈夫
● もっと悪くなる可能性がある
● 今使ったら後で困るかも
● できれば使いたくない

この“未来の最悪想定”が、行動を止めてしまう。

しかし実際には、
使わないまま状況が悪化する方が危険

“今が使うタイミング”を逃した人が、
生命線を失うケースが本当に多い。


■ ② 「不安ゆえの節約」が判断力を奪う

非常用アイテムを温存する心理の背景には、
不安からくる節約マインドがある。

● 水は最後まで残しておこう
● モバイルバッテリーは緊急時に
● 非常食はもっと極限の時に
● 簡易トイレは本当の最後の手段

しかしこれは逆効果。

不安が強いほど、
必要な消費を“禁じる”ようになる

結果として、
体力が落ち、情報が取れず、判断が遅れ、
生存率が下がる。


■ ③ “周りに迷惑をかけたくない心理”も危険

災害時、人は無意識にこう思う。

● 自分だけ使うのは気が引ける
● 他の人が我慢しているのに
● 子どもに優先したい
● 高齢者が困るかもしれない

優しさゆえの遠慮だが、
災害時には命取りとなる。

防災アイテムは「あなたが助かるため」にある。
使うべき時に使わなければ、
誰も助けられなくなる。


■ ④ 非常時は“使わない方がリスク”になるアイテムが多い

特に以下は温存してはいけない。

● 水(脱水が最も危険)
● 食料(低血糖になると判断力が落ちる)
● モバイルバッテリー(情報が途絶える=危険)
● 簡易トイレ(我慢すると感染症のリスクが上がる)
● 防寒具(体温を失うと体力が戻らない)

災害直後から積極的に使う方が安全。


■ ⑤ ラストエリクサー症候群を克服する方法

● ① 「使うタイミング」を明確に事前ルール化

・水:のどが渇く前に飲む
・食料:3〜4時間おきに摂取
・バッテリー:40%を切ったら充電 or 利用
・簡易トイレ:トイレが使えないと分かったらすぐ使用開始


● ② 「使ったら補充すればいい」と理解する

災害支援物資、近所の助け合い、自治体の供給など、
“ゼロのまま”にはならない仕組みがある。

使わずに体調や判断力を失う方が危険。


● ③ 心の準備として“使う練習”をしておく

・非常食を普段から食べて慣れる
・簡易トイレを実際に組み立てる
・バッテリー消費の癖を知る
・断水シミュレーションをする

使った経験があると、
緊急時でもためらわず行動できる。


■ ⑥ まとめ|災害で生き残る人は「使う勇気」がある

ラストエリクサー症候群は、
災害の現場では命を縮める危険な心理だ。

● 未来の最悪を想像しすぎる癖
● 不安による節約
● 周囲への遠慮
● 慣れていないアイテムへの抵抗

これらが、必要なタイミングで使う判断を止めてしまう。

災害では、
“使わない勇気”ではなく、“使う勇気”が命を守る。

非常用アイテムは、
最後まで温存するものではなく、
“生き残るために今使うもの”。

家族も、自分も守るために、
今日から「使う防災」を意識してほしい。

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