災害が発生すると、多くの医療機能が麻痺し、診療や検査が思うように行えなくなる。
その中で欠かせない存在が「臨床検査技師」。
普段は目立たないが、災害医療では“命をつなぐ最後の砦”になる。
ここでは、臨床検査技師が災害時に果たす役割と、平時からできる防災対策をまとめる。
■① 災害時、検査データは命の判断材料になる
被災地では、外傷だけでなく脱水・感染症・慢性疾患の悪化など、見た目ではわからないリスクが増える。
検査技師の役割は、その“隠れた異常”を見つけること。
● 血液検査で脱水・感染症・腎機能低下を早期発見
● 血糖値測定で糖尿病患者の急変を防ぐ
● 血液ガスで呼吸状態を把握
● 尿検査で腎機能や感染症の兆候をチェック
災害医療現場で、正確な検査データは医師の判断を大きく左右する。
■② 災害時の“簡易検査”が救命率を上げる
停電、断水、機器破損…災害時は検査環境が整わないことが多い。
それでも動けるのが、検査技師の強み。
● 簡易血糖測定器
● 尿試験紙
● ポータブル血液分析装置
● 指先から採血できるPOCT(ポイントオブケア検査)
限られた資機材でも最大限の精度を出すことで、救命判断のスピードが上がる。
■③ 感染症対策の要は“検査体制”
避難所では、狭い空間で多くの人が生活するため感染症が発生しやすい。
検査技師は、その早期探知に欠かせない。
● インフルエンザ
● ノロウイルス
● COVID-19
● 細菌性胃腸炎
これらの感染症を迅速に判断することで、避難所全体の感染拡大を防ぐことができる。
■④ 慢性疾患患者のフォローも重要
被災地で目立たないが最も深刻なのが「慢性疾患の悪化」。
検査技師のデータが患者の命を支える。
● 腎不全の人はBUN・クレアチニンが急上昇しやすい
● 心疾患患者はBNP測定が急変予測に役立つ
● 糖尿病患者は血糖管理が乱れる
● 高齢者は脱水が隠れて重症化しやすい
災害時の“継続医療”には、検査データが欠かせない。
■⑤ 検査技師が準備すべき“災害対策キット”
災害時にすぐ動けるよう、技師自身の備えも重要。
● モバイルバッテリー(医療機器用も含む)
● 頭灯(両手が使える)
● 簡易採血セット
● 衛生用品(手袋・消毒)
● 防災用白衣または目立つベスト
● ポータブルPOCT装置の持ち出し計画
“技師が安全に動けること”が災害医療全体の力になる。
■⑥ 災害弱者への検査支援
避難所には、検査が必要な人が数多くいる。
● 小児(感染症の悪化が早い)
● 高齢者(脱水・腎機能悪化が多い)
● 障がい者
● 妊婦(血圧・貧血の管理が必須)
技師の存在は、重症化を未然に防ぐ役割を果たす。
■⑦ 検査技師の“地域防災力”を上げる活動
平時から検査技師が防災に関わると、地域全体の医療力が底上げされる。
● 避難所での健康チェック講座
● 高齢者施設での検査相談会
● 学校での感染症教育
● 自治体の防災訓練で医療ブース担当
専門職の知識を地域へ還元することで、災害後の健康被害を大きく減らせる。
■まとめ|臨床検査技師は“災害医療の柱”
災害医療は、医師・看護師だけでは成立しない。
検査技師のデータこそが、命を救う最も重要な根拠になる。
● 隠れた異常を発見する
● 感染症を見抜く
● 慢性疾患の悪化を止める
● 簡易検査で医師の判断を助ける
臨床検査技師は、災害時に“医療を止めない”ための専門職。
その知識と技術は、今後の防災にますます欠かせない存在になる。

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