災害が起きると、けが人の治療だけでなく、避難生活での動けない環境が原因で体調を崩す人が急増する。
そこで重要な役割を果たすのが「理学療法士(PT)」だ。
理学療法士は“動く力”と“生活機能”の専門家。
避難所での体の不調を予防し、被災者の「動き」と「自立」を守る職業だ。
ここでは、災害時に理学療法士が担う役割と、その重要性をまとめる。
■① 避難生活による“生活不活発病”を防ぐ
災害後、最も多い二次健康被害の一つが「生活不活発病」。
● ずっと座りっぱなし
● 動くスペースが狭い
● 心配や不安で体を動かさない
● 介護が必要な人ほど動けない
こうした状態が続くと、筋力低下・認知機能低下・血栓のリスクが一気に高まる。
理学療法士は、被災者の身体機能を保つために専門的アプローチを行う。
■② 深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)を防ぐ
避難所では長時間の座位が続き、血栓症のリスクが高まる。
理学療法士は、その予防に最も適した専門家。
● 足のポンピング運動の指導
● ふくらはぎのマッサージ
● こまめな歩行の促し
● 水分補給の助言
小さな動きでも、PTの介入が生死を分けるほど効果が大きい。
■③ 高齢者・障がい者の“動作サポート”のプロ
災害時、要配慮者の生活は一気に難しくなる。
● トイレまで歩けない
● 体を起こせない
● 段差を越えられない
● 移動に介助が必要
理学療法士は、こうした人たちの動きを改善し、より安全に生活できるようサポートする。
■④ 避難所の“動線設計”に理学療法士の視点は必須
避難所内の配置や動線が悪いと、転倒事故や移動負担が増える。
PTの視点で改善できる例:
● ベッドと通路の距離
● 車いすの動きやすさ
● 手すりの必要性
● 転倒しやすい段差の解消
● トイレまでの導線改善
理学療法士は環境調整のプロでもあり、避難所の安全性を大幅に高める。
■⑤ 在宅避難者へのフォローにも強い
自宅が損壊していなくても、生活環境が変わり体調を崩す人は多い。
理学療法士は、在宅避難者の生活機能低下を予防するためのアドバイスが可能。
● 自宅でできるリハビリ
● 家具の配置見直し
● 動きやすい生活動線の調整
● 腰痛や肩こり悪化の予防
専門家の視点があれば、家にいても健康を守りやすい。
■⑥ けが・骨折・捻挫のリハビリ支援
災害では転倒・落下・衝突などによるけがが非常に多い。
理学療法士は、応急処置後のリハビリ段階で強みを発揮。
● 痛みの軽減
● 可動域改善
● 歩行訓練
● 再発予防運動の指導
怪我の後遺症を少なくし、生活復帰を早める力がある。
■⑦ 子ども・高齢者への運動指導にも対応
災害時は、幅広い世代が心と体に負担を抱える。
● 子どものストレスによる姿勢悪化
● 高齢者の歩行バランス低下
● 介護度が進むリスク
PTは、年齢・体力に合わせた運動を提案できるため、避難生活でも安全に体を保てる。
■⑧ 理学療法士が災害時に備えておくべき物品
PT自身の活動を助ける装備も重要。
● ゴムバンド(セラバンド)
● マッサージ用手袋
● テーピング
● ポータブルライト
● 書類クリップとメモ
● 小型救急キット
これがあると避難所での支援の幅が格段に広がる。
■まとめ|理学療法士は“避難生活のクオリティ”を守る専門家
理学療法士は被災者に寄り添い、体の機能を維持し、生活を守る力を持つ。
● 生活不活発病の予防
● 血栓症リスクの軽減
● 高齢者・障がい者の生活支援
● 避難所の動線改善
● 在宅避難者のフォロー
● ケガのリハビリ
● 子ども・高齢者の運動指導
理学療法士の視点は、「避難所の健康」を根本から支える大切な柱。
被災地支援において、理学療法士の存在は欠かせないものとなっている。

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