高齢者の非常食は、若い家族と同じ備蓄では不十分。
災害時は体力が急激に落ち、噛む力・飲み込む力・水分調整・持病の管理など、
“年齢特有のリスク”が一気に表面化するためだ。
ここでは、防災士の視点で
「高齢者の命を守る非常食の完全版」
を分かりやすく解説する。
■① 高齢者は“噛む力・飲み込み力”が弱い|柔らかい食材が最優先
高齢者は災害時、普段よりも飲み込みが悪くなり、誤嚥リスクが高まる。
そのため、次のような“柔らかい食べ物”を中心に備蓄すると安全。
● やわらかご飯
● おかゆ(レトルト・フリーズドライ)
● 具だくさん味噌汁
● やわらかレトルト惣菜
● おでん(缶詰)
● スープ類
● ゼリー飲料
「かたくない」「水分が多い」「飲み込みやすい」
この3つが重要。
■② 高齢者は“脱水リスクが高い”|水分補給用品は必須
高齢者は喉の渇きを感じにくく、避難所では脱水症状が起こりやすい。
非常食以上に“水分”が重要になる。
● 水:1日1.5〜2Lを目安に
● 経口補水液(OS-1など)
● お茶・麦茶のパック
● みそ汁・スープ
特に 経口補水液は命を守るアイテム なので、必ず複数本備えておく。
■③ “持病・薬”と食事の相性も考える
高血圧・糖尿病・腎臓疾患などの持病を持つ高齢者は、以下に注意が必要。
● 塩分が高すぎる食品
● 糖分が多いゼリーや菓子
● カップ麺のスープ
避難所ではバランスが偏るため、
次のものを必ず備蓄しておくと安心。
● 野菜スープの素
● カロリー調整食品
● 塩分控えめレトルト
● ノンオイルツナ缶
● 無糖ゼリー
主治医に「災害時の食事はどうすべきか」を事前に聞いておくことも大切。
■④ 高齢者は“タンパク質不足”で急激に弱る
災害時は栄養バランスが偏り、筋力低下が一気に進む。
これが 転倒 → 骨折 → 生活機能低下 の大きな原因。
備えるべきタンパク質源は…
● サバ缶(やわらかく食べやすい)
● 大豆ミート
● 卵スープ
● 豆腐パック(常温保存可能なタイプ)
● プロテインゼリー
タンパク質は「体力維持」だけでなく、「免疫力」にも直結するため最重要。
■⑤ “歯が弱い”方向けの非常食は必ず別で準備
義歯や差し歯の方は、災害時に噛む力が落ちる。
以下は持っていると非常に役立つ。
● やわらかおかず
● とろみ剤(食事が飲みやすくなる)
● 介護食のやわらかシリーズ
● 具なしスープ+後入れ具材
● 溶けやすいクラッカー
噛む力に自信がない方ほど、
「スプーンだけで食べられる食品」を中心にすると安全。
■⑥ “片手で開封できる・軽い・こぼれにくい”が大事
高齢者は手の力が弱く、缶詰も開けられないことがある。
避けたいもの
× 缶切りが必要な缶詰
× 硬いプルトップ缶
× 固形が大きいもの
× パッケージが開けにくいもの
積極的に備えるもの
● スプーン付きパウチ食品
● プルトップでも軽いタイプ
● ストロー付きゼリー
● レトルトパウチ(手で切れる)
「ひとりでも食べられるか?」
を基準に選ぶ。
■⑦ “便秘対策”も重要になる
災害時は水不足・活動不足で便秘が起こりやすい。
特に高齢者は便秘が命を脅かすこともある。
備えておきたいもの
● 食物繊維スープ
● プルーンピューレ
● オリゴ糖
● 常温ヨーグルト
● 水分多めの食事
また、普段飲んでいる便秘薬を3〜5日分は必ずストックしておく。
■⑧ 高齢者の非常食“必須セット”
防災士として最低限おすすめできるセットはこれ。
● おかゆ・やわらかご飯
● 具だくさん味噌汁
● やわらかレトルトおかず
● スープ類(コーン・ポタージュなど)
● ゼリー飲料(エネルギー系・水分系)
● プロテインゼリー
● サバ缶・大豆ミート
● フルーツ缶(やわらかいもの)
● 経口補水液(OS-1)
● とろみ剤
● 紙皿・スプーン
● 水(1.5〜2L × 3日分)
● ウェットティッシュ
● 持病の薬(1週間)
これだけで 高齢者が自力で安全に食べられる環境 が整う。
■まとめ|高齢者の非常食は“安全・栄養・水分”の3本柱で決まる
高齢者に必要なのは…
● 飲み込みやすい
● 噛まなくてもOK
● 自分で開封できる
● 水分が多い
● 栄養が不足しない
という“身体への優しさ”だ。
災害時こそ、
「噛む・飲む・動く」を守る食事が命を守る。
家族に高齢者がいる家庭は、
今日からこのリストで備蓄を整えてほしい。
あなたの少しの準備が、大切な命を確実に守る。

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