団地は日本の多くの地域にあり、生活の基盤として重要な住環境だが、
防災の観点から見ると“災害に弱い要素”がいくつも存在する。
特に古い団地は老朽化・高齢化・設備の限界が重なり、災害時のリスクが大きい。
ここでは、防災士の視点で「団地特有の危険」と「家庭でできる対策」を解説する。
■① 老朽化が進んだ建物は“地震に弱い”
1960〜80年代の団地には、以下の問題がある。
● 建築基準法が古い時代の耐震基準
● コンクリートの劣化
● 給排水管の老朽化
● 外壁の剥落リスク
特に“耐震補強が行われていない団地”は、震度6強以上で大きな被害を受ける可能性がある。
■② 高層団地は“停電=生活機能停止”のリスクが大きい
団地の高層階では、災害時に以下が一気に問題化する。
● エレベーター停止
● 水が上階まで上がらない(断水)
● 荷物運搬が困難
● 高齢者が階段を使えない
特に停電時は実質「孤立状態」になりやすい。
■③ 高齢化率が高い団地は“避難が遅れる”
団地は高齢者世帯が多く、避難のボトルネックになりやすい。
● 階段移動が困難
● 持病がある
● 家族が少ない
● 避難情報を得にくい
地域ごとに「避難に時間がかかる住民」が偏在するため、災害時に支援が追いつかないケースも。
■④ 密集しており“火災が広がりやすい”
団地は建物が密集し、1棟に住む人数も多い。
● 隣戸火災が広がりやすい
● ベランダに荷物を置きやすく延焼経路になる
● 階段が煙で塞がれるリスク
特に古い団地はスプリンクラーや自動火災報知設備が不十分な場合がある。
■⑤ ベランダ避難ルートが“物で塞がれやすい”
団地でよく見られる危険行動がこれ。
● ベランダに荷物を置く
● 物置を設置する
● 自転車・家具を置いてしまう
これは「避難はしご」や「隣戸との隔壁」を塞ぐ行為になり、
火災時に脱出できなくなる事例が非常に多い。
■⑥ 周辺が“浸水しやすい土地”の団地も多い
団地は昭和期に大量建設されたため、
● 低地
● 河川近く
● 埋立地
など、水害のリスクが高い土地に建設されている場合がある。
浸水すると外に出られず「団地ごと孤立」する危険がある。
■⑦ 団地は“共助が最重要”
団地には防災面の弱点があるが、
密集して住んでいるからこそ“共助が機能しやすい”という強みがある。
● 声をかけやすい
● 高齢者の見守りができる
● 安否確認が早い
● 地域で備蓄を共有しやすい
団地ほど“住民同士のつながり”が大きな力になる住環境はない。
■⑧ 団地住まいが必ずやるべき防災対策
家庭でできる団地専用の備えは次の通り。
● エレベーター停止を前提に“2〜3日分の水・食料”
● ベランダの避難経路を完全に空けておく
● 家具の固定(倒れたら出口が塞がる)
● 懐中電灯・ランタンを部屋ごとに配置
● 高齢者の避難計画をあらかじめ作る
● マンション防災会に参加する
● 1階〜近隣の友人に連絡網を作る
高層団地は「縦の孤立リスク」を理解しておくことが重要。
■まとめ|団地は“弱点を知れば強くなる住環境”
団地には、防災の観点で以下の弱点がある。
● 建物の老朽化
● エレベーター停止に弱い
● 高齢化による避難の遅れ
● 密集による火災リスク
● ベランダ荷物による避難阻害
● 浸水による孤立
しかし団地は、
● 住民同士の距離が近い
● 安否確認が早い
● 助け合いが自然にできる
という“共助が強い住環境”でもある。
弱点を知って備えれば、
団地は災害に強い暮らしへと必ず変わる。

コメント