生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)は、
平常時はコントロールできていても、災害時には一気に悪化しやすい。
避難生活では、水不足・ストレス・食事の偏り・薬切れが重なり、
“普段は安定している人ほど危険”になるケースも多い。
ここでは、防災士の視点から「生活習慣病の人が災害に弱い理由」と「家庭でできる備え」を解説する。
■① 薬の“突然の中断”が最も危険
災害で起きやすいトラブルはこれ。
● 薬が流される
● 薬局・病院が閉まる
● 手元の薬が3日で切れる
● 受診できない
生活習慣病の薬は「1日飲まないくらい大丈夫」と思われがちだが、
高血圧・糖尿病は薬をやめると急激に悪化する。
■② 水不足・脱水で“急変”しやすい
避難所では水が不足する。
● 水が飲めない → 血圧上昇
● 脱水 → 血液がドロドロ
● 糖尿病薬が効きにくくなる
特に高齢者は喉の渇きを感じにくく、気付かないうちに危険状態になる。
■③ ストレスで血圧・血糖値が跳ね上がる
避難生活のストレスは、生活習慣病に直撃する。
● 睡眠不足
● 騒音
● 寒さ
● 不安
● 食事制限
これらはすべて“交感神経を刺激して血圧・血糖値を上げる要因”。
■④ 食事が“塩分・糖分・脂質”に偏りやすい
避難食はどうしても栄養バランスが偏る。
● カップ麺
● パン
● 菓子
● おにぎり
これらは高血圧・糖尿病に不向きで、避難生活が長引くほど健康リスクが跳ね上がる。
■⑤ 避難所の“運動不足”も危険
狭いスペース・寒さ・疲れから、避難中は運動量が激減する。
● 血糖値が上がりやすい
● 血圧が安定しない
● 足の血流が悪化し、血栓リスクが増える
深部静脈血栓(災害時エコノミークラス症候群)にも要注意。
■⑥ 生活習慣病の人は“災害弱者”として優先支援の対象
生活習慣病は見た目で分からないため軽視されがちだが、
● 薬が切れると命の危険
● 食事制限がある
● 水分補給が必須
● 長期避難に弱い
医療的ケアが必要な“要配慮者(要支援者)”に分類されるべき健康状態である。
■⑦ 家庭で必ず準備するべき“生活習慣病の防災セット”
生活習慣病のある人は、最低限これを用意しておく。
● 7〜14日分の薬
● お薬手帳(コピーも保存)
● 低塩のレトルト食品
● 常温保存の野菜ジュース
● 補水液(OS-1など)
● 小型血圧計・血糖測定器
● 主治医の連絡先
● 持病を記したメモ(避難所で提示できる)
薬は“非常持ち出し袋”と“家の見える場所”の両方に入れておく。
■⑧ 本人だけでなく家族が“把握していること”が重要
災害時は、本人がパニックで説明できないことも多い。
● どんな薬を飲んでいるか
● 飲み忘れたらどうなるか
● 持病の危険なサイン
● 主治医・かかりつけ薬局
これらを家族が把握しておくと、避難所で医療者が最速で対応できる。
■まとめ|生活習慣病は“災害に弱い体”だからこそ事前準備が命を守る
生活習慣病の人は、災害時に次のリスクが高い。
● 薬切れが致命傷になる
● 水不足で体調が急変
● ストレスで血圧・血糖が暴騰
● 避難食が病状を悪化
● 運動不足で血栓リスク
● 避難生活が長引くほどダメージ増
しかし、事前に備えていれば多くのリスクは減らせる。
災害時こそ、
“普段コントロールできている生活習慣病が一気に崩れる”
という現実を知り、家庭での備えを強化することが命を守る最強の防災になる。

コメント