【防災士が解説】防災×倉庫|“広い空間ほどリスクが増える”倉庫の災害対策

倉庫は、家庭とはまったく違う独特の災害リスクを持つ。
広い空間・高い天井・大量の物品・フォークリフトの動線――
これらが災害時に一気に“弱点”に変わる。

ここでは、元消防職員・防災士の視点で
倉庫の地震・火災・風水害リスクを分かりやすく解説し、
今日から実行できる対策をまとめる。


■① 地震に弱い理由|“棚の崩落”が最も危険

倉庫の地震リスクは、家庭と比べ物にならない。

● 高さ2~5mのラックが倒れる
● 重量物が落下する
● 通路が塞がり、逃げられなくなる
● フォークリフトが横転

特に背の高いスチールラックの横揺れ増幅は致命的。

→ ラックの固定・突っ張り・アンカー止めは必須。


■② 火災に弱い理由|“倉庫×可燃物”は燃え広がりやすい

倉庫火災の特徴は「燃えたら止まらない」。

● 大量の段ボール・包装材
● 高積みで可燃物が密集
● 天井が高く熱がこもる
● 初期消火が遅れがち
● 自動火災報知設備が鳴りにくいケースも

倉庫火災は放水が届かない・急激に延焼するのが特徴。

→ 定期的に可燃物を整理することが最大の防災。


■③ 通路が長く“煙が広がりやすい”

倉庫の通路は長く、煙が一方向に一気に流れ込む。

● 煙が充満すると数十秒で視界ゼロ
● 非常口が見えなくなる
● 煙は上ではなく“横方向”にも広がる

→ 通路上の非常灯・誘導灯の点検は絶対に必要。


■④ 台風・豪雨に弱い理由|“屋根・シャッター・側溝”

倉庫の大空間は風や雨に弱い。

● 強風でシャッターが破損
● 雨で浸水し資材が全滅
● 排水が悪いと床上浸水
● トラックヤードに水が溜まると物流ストップ

特にシャッター破損は風速30〜35mで発生。

→ 飛来物対策・シャッター補強が防災の要。


■⑤ 倉庫の“人的リスク”も大きい

倉庫は作業員も多く、災害時に人的被害が出やすい。

● 落下物で負傷
● パレットの転倒
● フォークリフトとの接触事故
● 暗所で転倒
● 避難ルートが分かりにくい

→ 安全教育(防災訓練含む)が不可欠。


■⑥ 倉庫が取るべき防災対策“7つの鉄則”

倉庫の特性に合わせて、対策を最小限でまとめた。

① ラック固定の徹底

・アンカー固定
・背板補強
・重量物は下段
・落下防止バー

② 可燃物の整理

・段ボールはこまめに圧縮
・ゴミは1カ所に溜めない
・高積みをやめる

③ シャッターの強風補強

・ストッパー強化
・飛来物ガード
・台風前に点検

④ 排水・浸水対策

・側溝の清掃
・土のう設置
・床上保管(パレット上げ)

⑤ 避難経路の可視化

・通路を塞がない
・非常灯の点灯チェック
・避難ルートを掲示

⑥ 初期消火の強化

・消火器を見える位置へ
・定期点検
・アルコール可燃物の分別

⑦ 作業員への教育

・落下物対策
・フォークリフト接触防止
・避難訓練を年1回


■まとめ|倉庫は“事故の前兆”を見逃さないことが最大の防災

倉庫は大空間ゆえに、
● 地震
● 火災
● 風水害
● 作業事故
が重なりやすい場所だ。

しかし、
✔ ラック固定
✔ 可燃物整理
✔ シャッター補強
✔ 排水点検
✔ 避難ルート確保
これらを抑えるだけで、災害リスクは大幅に減る。

「倉庫は広いから大丈夫」は大きな誤解。
正しく管理すれば、倉庫は“安全な資材の砦”になる。

今日から、できる対策をひとつずつ積み重ねてほしい。

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