家庭の火災は、わずか数分で手に負えない状態になる。
しかし、出火してから“ごく初期”なら、家庭用消火器で十分に消せるケースも多い。
元消防職員・防災士として、
住宅用消火器を どれを選び、どこに置き、どう使うべきか を分かりやすく解説する。
■① 住宅用消火器は“家庭防災の必需品”
火災の多くは、次のような日常の場面から起こる。
● コンロの火災
● 電気ストーブの火災
● トラッキング火災（コンセント）
● 天ぷら油の発火
● 暖房器具の転倒
これらは初期段階なら家庭用消火器で鎮火可能。
特に「天ぷら油火災」は急激に大きくなるため、
住宅用消火器があるかどうかで被害が大きく変わる。
■② 住宅に向いている消火器はこの3つだけ覚えればOK
家庭には、“なんでも消せる業務用”よりも、
安全で扱いやすい家庭向けタイプが最適。
◎① 粉末（ABC）消火器
● 一番一般的
● 木材・紙・布・油・電気 すべて対応
● 寒さにも強い
※デメリット：粉が部屋中に飛ぶので後片付けが大変
→ 最初の1本としておすすめ。
◎② 強化液（中性）消火器
● 油火災・固体火災に強い
● 粉より飛散が少なく、片付けも比較的ラク
● 電気火災にも使える
→ 家庭向けでバランスの良いタイプ。
◎③ スプレー式簡易消火具
● 女性・高齢者でも片手で使える
● 小さなコンロ火災・布の火には有効
● 値段も安くキッチン常備に最適
※性能は消火器ほど強くないため、
“補助用”として使うイメージがベスト。
■③ 実は…消火器にも“寿命”がある
家庭でよくあるNGがこちら。
❌「押し入れから古い消火器が出てきたから大丈夫でしょ」
→ 中身が固まっていたり、腐食して破裂する危険もある。
一般的に、
● 本体寿命：10年
● 蓄圧式なら年1回の点検
が必要。
※サビ・腐食・変形があれば即交換。
■④ 消火器の“正しい置き場所”
火災は一瞬で大きくなるため、
「取りに行く時間がある場所」に置いては意味がない。
置く場所の基本は3つ。
◎① キッチン
家庭火災の原因ダントツ1位。必ず1本置く。
◎② リビング
暖房器具・電源タップ・家電の火災に備える。
◎③ 玄関
避難と初期消火の両方に動きやすい場所。
■⑤ 使い方は“PASS法”を覚えればOK
消防現場でも使われる基本動作。
▼PASS（パス）とは
P：Pull（安全ピンを抜く） A：Aim（ホースを火元に向ける） S：Squeeze（レバーを握る） S：Sweep（左右に掃くように放射）
家庭でもまったく同じ。
■⑥ 初期消火の“限界”を知っておく
消火器を使う上で最も大事なのは…
❌ 無理して消そうとしないこと
火が天井に届いたら、一般家庭ではもう初期消火は不可能。
煙が充満したら1分で命に関わる。
▼避難判断の基準
✔ 火が天井に届いた
✔ 煙が広がって視界が悪い
✔ 熱さ・爆発音を感じる
✔ 家族が近くにいない
→ 迷わず避難が最優先。
■⑦ 消火器の“後片付け”のコツ
粉末タイプを使った後は部屋が真っ白になる。
後処理は以下の手順で行う。
● 掃除機（フィルター必須）
● 固く絞った雑巾で拭く
● 配線・家電を乾燥させる
※集合住宅は廊下に飛散すると滑るため注意。
■まとめ｜住宅用消火器は“最強の初期消火ツール”
家庭用消火器を備えるメリットは、圧倒的に大きい。
● 初期の火災なら鎮火が可能
● 家族の命を守る時間を稼げる
● キッチン火災に特に有効
● スプレー型は補助として最適
● 10年で交換が必須
● 無理な消火は禁物、避難が最優先
“火災は突然起こる”。
その一瞬に家族を守るのが、住宅用消火器だ。
キッチンに1本、玄関に1本。
これだけで家の安全度は一気に上がる。
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