【防災士が解説】防災×災害医療|“最初の1時間”が生死を分ける理由

災害時に最も重要なのは「医療体制の確保」。
しかし通常医療とはまったく違う世界――
それが “災害医療(ディザスターメディスン)” だ。

ここでは、現場経験と防災士として、
なぜ災害医療が重要なのか、何が通常医療と違うのかを分かりやすく解説する。


■① 災害医療は“通常医療の延長”ではない

大地震・土砂災害・大規模火災が起きると
病院は瞬間的にキャパを超える。

● 医師・看護師の数が足りない
● 病院の機能が停止(停電・断水・損壊)
● 救急車が道路の寸断で動けない
● 同時多発的に重症傷病者が発生

つまり、通常医療の前提が崩れる

そのため災害医療では
「限られた資源で、最も多くの命を救う」
というトリアージ思想が基本になる。


■② “トリアージ”は災害医療の最重要スキル

災害時、救急隊や医療班がまず行うのが トリアージ

● 黒:救命が不可能
● 赤:一刻を争う重症
● 黄:中等症
● 緑:軽症

全員を同時に治療できない状況では、
「助かる可能性の高い人から助ける」という判断が必要。

これは辛いが、災害医療では絶対に欠かせない行動。


■③ “72時間”が医療の限界ライン

災害医療には時間の壁がある。
特に 発災から72時間 は「生存率が急落するライン」。

● 圧死・窒息
● 低体温症
● 脱水
● 挟まれによるクラッシュ症候群

これらが72時間を境に急増する。

だから災害医療では
❶ 捜索
❷ 救助
❸ 初期医療
のスピードが命を左右する。


■④ 災害医療の主役は“病院ではなく地域”

多くの人が誤解しているが、
大災害時は“病院”が主役ではない。

主役は
● 救急隊
● 消防
● 自衛隊
● DMAT
● 地域住民
● 医療系ボランティア

病院は限界状態になりやすく、
地域で応急処置ができるかどうかが生存率を大きく変える。


■⑤ 避難所の“医療環境”が二次災害を防ぐ

避難生活が長引くと、次の医療リスクが急増する。

● エコノミークラス症候群
● 感染症(ノロ・インフル・コロナ)
● 持病悪化(高血圧・糖尿病・喘息)
● 低体温症
● 脱水
● ストレスによる体調悪化

避難所の医療班や保健師、医療ボランティアが入るまで、
住民自身のセルフケアが命を守る。


■⑥ “持病のある人”は災害医療で最も弱者になる

災害医療の現場では以下の人の優先度が非常に高い。

● 糖尿病
● 心臓病
● 腎臓病(透析中)
● 喘息
● 精神疾患
● アレルギー
● 乳幼児・高齢者

薬が切れると命に直結するため、
平常時の備えが最重要。


■⑦ 一般市民ができる災害医療の準備

災害医療は医療者だけのものではない。
市民ができる備えが多くある。

✔ お薬手帳のコピー
✔ 7日分の常備薬
✔ 高齢者・乳幼児の医療セット
✔ 既往歴をまとめたカード
✔ 絆創膏・包帯・三角巾
✔ マスク・消毒液
✔ 簡易担架(毛布で代用可)

「自分と家族の命は、自分で守る」
これが災害医療の基本。


■まとめ|災害医療は“最初の1時間”で勝負が決まる

災害医療は通常医療とは別物。
● トリアージ
● 初期医療
● 地域の応急対応
● 持病管理
● 避難所の医療環境

これらを理解しておくことが、
自分と家族、地域の命を守る最強の行動につながる。

元消防職員・防災士として断言する。
災害医療を知ることは、災害時の生存率を確実に上げる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました