【防災士が解説】防災×災害医療⑤|“災害時の医療崩壊を防ぐために市民ができること”

大地震・豪雨・停電が起きると、真っ先に逼迫するのが医療
病院はすぐ満床になり、救急はパンクし、薬も足りなくなる。
これは“医療崩壊”と呼ばれる状態で、一度起きると回復に長い時間を要する。

しかし、多くの人は知らない。
医療崩壊を防ぐ主役は、市民ひとりひとりである ということを。

ここでは、災害時に医療崩壊を防ぎ、限られた医療資源を救うために私たちができる行動をまとめる。


■①「軽症は自宅でケア」できる準備をしておく

災害時、医療を圧迫するのは “本来は病院に行かなくても良い軽症者”

● 擦り傷
● ねんざ
● 軽い発熱
● ちょっとした腹痛
● 頭痛

これらに大量の人が殺到すると、重症者が治療を受けられなくなる。

家庭でケアできるよう
✔ 絆創膏
✔ 消毒液
✔ 包帯
✔ 解熱鎮痛剤
✔ 胃腸薬
✔ 体温計
✔ 氷枕

“家で治せる力”を育てることが、医療崩壊を防ぐ第一歩。


■② “持病の悪化”を防ぐのが医療崩壊対策の本丸

災害時に病院が埋まる理由の大半は
「持病の悪化」

● 高血圧の薬が切れて倒れる
● 糖尿病で脱水になり救急搬送
● 心臓病の悪化
● 呼吸器疾患の悪化
● アレルギー発作
● 精神疾患の悪化

これらは“事前の備え”で防げるものが多い。

✔ いつもの薬は最低 7~14日分
✔ 医療キットの常備
✔ 水分と塩分の管理
✔ 睡眠と体温管理
✔ ストレス対策

「日常の健康管理」こそ最大の防災。


■③ 感染症を拡げない=医療を守る行動

避難所の最大リスクは 感染症の集団発生
これだけで医療は簡単に崩壊する。

予防の基本は以下だけで十分強い。

✔ 手洗い・消毒
✔ 咳エチケット
✔ マスク
✔ 密を避ける
✔ 水分と睡眠

感染症を起こさない、広げないことが
“医療を救う行動” である。


■④ むやみに119番を使わない

災害時、救急車は“本当に必要な人”のための資源。
そのため、次のような行動が重要。

✔ 判断に迷った時は「#7119」で相談
✔ 近くの人が応急手当できるようにする
✔ 交通が混乱している時は自家用車も検討

不必要な119番が減るだけで、
救われる命は確実に増える。


■⑤ 応急手当のスキルを持つ

応急手当のスキルは、医療崩壊を防ぐ“最強の市民力”。

● 止血
● 骨折の固定
● 熱中症対応
● 心肺蘇生(CPR)
● AEDの使用
● のどに詰まった時の対応

これらを知っている家族や地域が多いほど、
救急車の負担は減り、助かる命が増える。


■⑥ “在宅避難”できる家庭は在宅で

災害医療は「避難所の人数」がダイレクトに負荷になる。

✔ 電気
✔ 水
✔ トイレ
✔ 食料
✔ 寝具

これらが家に確保できていれば、避難所に行く必要はない。

安全が確保できる家族は“在宅避難”を選ぶことで、
医療・避難所運営の負担を減らせる。


■⑦ 正しい情報発信をすることも医療を守る行動

デマ・誤情報は、災害時に
「無駄な受診」「パニック受診」 を引き起こす。

✔ SNSで根拠のない情報を拡散しない
✔ 公的機関や医師発信を優先
✔ 家族・地域に正しい情報を共有

冷静な情報行動が、医療を守る。


■まとめ|医療崩壊を防ぐのは“あなたの行動”

災害医療は完璧ではない。
だからこそ、市民の行動が医療を守るカギを握る。

● 家庭で軽症を治せる準備
● 持病の悪化を防ぐ
● 感染症を広げない
● 不必要な119をしない
● 応急手当を身につける
● 在宅避難という選択
● 正しい情報発信

元消防職員・防災士として伝えたいのは一つ。
“あなたの行動が、誰かの命と医療を救う” ということ。

災害時に必要なのは、特別な力ではない。
日頃の小さな備えと正しい判断が、医療崩壊を防ぐ最大の武器となる。

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