津波は「地震のあとに来るもの」というイメージが強いが、
実は 地震が起きなくても津波は発生する。
これが「非地震性津波」と呼ばれる現象だ。
揺れがないため危険に気づきにくく、
映像・記録の上でも被害が突発的になることが多い。
ここでは、非地震性津波の原因と特徴、避難のポイントを防災士の視点で解説する。
■① 非地震性津波は“地震以外の外力で海全体が動く”ことで起こる
地震津波は海底変動が原因だが、
非地震性津波は次のような別の力によって海水が一気に動く。
● 火山噴火
● 海底地すべり
● 気象性(メソ気圧擾乱)
● 隕石落下
● 大規模人工爆発
→ 揺れを感じないため、避難判断が遅れやすい。
■② 火山噴火による津波(火山津波)は非常に強い
火山は海水を強制的に押しのけるため、
非地震性津波の中でも最大級の被害を生みやすい。
● 噴火の爆発エネルギーで海面が隆起
● 火山体の崩落で大量の海水が押し出される
● カルデラ陥没による急激な海面変動
● 2022年トンガでも世界規模の津波発生
→ 地震がなくても津波警報が出る典型例。
■③ 海底地すべりによる津波は“突然”襲う
地震の有無に関わらず、海底の斜面が崩れると津波が発生する。
● 大量の土砂が高速で移動
● 海水が上に押し上げられる
● 震度1以下でも大津波の可能性
● 過去には漁村が壊滅した事例も
→ “海岸が急に騒がしい” 時は、原因不明でも離れるべき。
■④ 気象性津波(メソ気圧擾乱)は日本でも多い
急激な気圧の落ち込み(数ヘクトパスカルの下降)で
海面が吸い上げられたり押し下げられたりして発生する。
● 晴れていても発生
● 沿岸で突然の海面上昇
● 1〜3mの波でも港の作業員が流される
● 「副振動」として認識されることも
→ 気象庁が緊急発表する「高波情報」に注意。
■⑤ 隕石落下でも巨大津波が発生(極めてまれ)
現実的な可能性は低いが、
海面への衝撃で海水が一気に盛り上がる。
● 数十m規模の波が広域に及ぶ
● 古生物時代の大量絶滅級津波がこれに該当
→ 防災上はほぼ考慮不要だが“非地震性”の代表例。
■⑥ 非地震性津波は“前兆がほぼ見えない”
地震津波のように
「強い揺れ → 避難を判断」の流れが使えない。
● 揺れなし
● 気づいたときには海岸が騒音
● 突然の海面上昇
● 引き波がほとんどない
→ 観測情報(津波警報)が最重要の命綱になる。
■⑦ 津波警報は“地震以外でも発表”される
気象庁は、海面変動の観測データから
地震とは無関係に津波警報を出すことがある。
● 沿岸の潮位計が異常上昇
● BOY観測で急激な海面変化
● 気象衛星による噴火検知
→ 「地震がないのに津波警報」が起きる理由はここにある。
■⑧ 家庭でできる“非地震性津波の防災術”
揺れがないため、情報収集が命を守るカギ。
● 海沿いでは津波警報アプリを必ず導入
● 海に近い地域は日常的に潮位をチェック
● 港・釣りは警報発表時点で即撤退
● 気象性津波の起きやすい地域を把握
● 海外噴火が起きたら日本の津波情報を確認
● “揺れがないから安全”という思い込みを捨てる
→ 非地震性津波は、警報が出た時点で迷わず逃げる が鉄則。
■まとめ|非地震性津波は“揺れがないからこそ危険”。情報を先に取れる人だけが助かる
非地震性津波から学べるポイントは次の通り。
● 地震がなくても津波は起きる
● 火山・地すべり・気象が主な原因
● 前兆がほぼないため判断が遅れやすい
● 日本でも発生し、死者を出すケースもある
● 情報収集が最強の防災対策
● 海沿いは常に“津波警報”への意識が必要
● 見えない危険ほど避難が難しい
非地震性津波は、
「揺れなかった=安全」という誤解を打ち砕く重要な事例。
正しい知識と情報収集が、家族を守る最も強力な防災手段になる。

コメント