【元消防職員が解説】防災×消防士の滑り棒|出動時に本当に使うのか?現場経験者が語る“リアル”

映画やドラマでよく見る“滑り棒(スライドポール)”。
消防士が上階から一気に滑り降り、消防車に走っていく姿は有名だ。

では──
実際の消防士は本当に滑り棒を使っているのか?

答えは、
「使う消防署もあるが、使わない消防署も増えている」

ここでは、現場での実情と安全面から解説する。


■① 昔は全国的に使われていた(理由:とにかく速い)

滑り棒は“出動時間を1秒でも縮めるための装置”。

● 階段を駆け下りるより速い
● 一気に1階へ移動できる
● 夜間でも迷わず動ける
● 素早い出動が求められた時代の象徴

特に古い消防署では、
滑り棒=出動の当たり前 だった。


■② しかし現在は“使用しない署”が増加している

近年は滑り棒のある署が減っている。その理由は…

転落事故のリスク
足腰・肩のケガが多かった
労務安全上の改善方針
建物の構造が変わった(最新署は1階中心)
シャッター横に仮眠室・待機室を配置する時代へ

つまり、
安全性と動線設計の進化により、棒が不要になった


■③ 現在も滑り棒を使う消防署は“旧署や大規模署”

とはいえ、完全に絶滅したわけではない。

● 築年数の古い消防署
● 大規模消防署の上階配置
● 改修が難しい建物

こうした場所では今でも使われている。

実際に滑り棒を使用している隊もいて、
“出動最優先”の文化が残る。


■④ 滑り棒の使い方|慣れないと危険

滑り棒は技術が必要。

● 両手でしっかり握って降りる
● 足でスピードを調整
● 手を火傷しないようにグローブ必須
● 下では必ず減速して着地
● 酔っていると危険(昔は実際に事故もあった)

特に夜中の寝起きでの滑降は危険が増す。

だから現代では
“安全>スピード” の考えが主流となった。


■⑤ 最新の消防署は“すぐ出動できる配置”が主流

現代の消防署は、建築時に出動動線が最適化されている。

● 仮眠室=1階
● 出動通路=一直線
● 車庫が生活フロアに隣接
● 滑り棒なしでも10秒で出動可能

つまり、
“滑り棒の必要がない構造”になった


■⑥ 滑り棒は“消防文化の象徴”として残る面もある

現場では、滑り棒に対してこんな声もある。

● 「消防士っぽくて好き」
● 「伝統を感じる」
● 「初めて滑ったとき感動した」

滑り棒は単なる設備ではなく、
消防士の歴史的シンボル でもある。


■まとめ|滑り棒は“使う署もあるが、減りつつある”

この記事のポイント。

● 昔は全国で使われていたが、現在は減少傾向
● 理由は“安全性・建物構造・労務改善”
● 一部の旧署や大規模署では今も使用中
● 滑り棒はスピード最優先の象徴だった
● 最新署は動線設計が優秀で棒が不要
● 滑り棒は“消防文化”として残っていく可能性も高い

結論:
“滑り棒は今でもあるが、必ず使うわけではない”
消防の進化とともに、出動スタイルも変わってきている。

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