大規模災害が起きたとき、
全国から一斉に被災地へ向かう「緊急消防援助隊(ERFT)」。
しかし、その中身は多岐にわたり、
“ひとつの部隊”ではなく、
高度な専門部隊の集合体 で構成されている。
ここでは元消防職員として、
緊急消防援助隊の組織構成をわかりやすく解説する。
■① 緊急消防援助隊は“全国の消防本部”で構成される巨大ネットワーク
緊急消防援助隊は、特別な専従部隊ではない。
→ 全国の消防本部に所属する隊員が 大規模災害時に“国の命令で集結する”仕組み
これが最大の特徴。
現在は、
● 消防本部:およそ722程度
● 登録隊員:約16,000名以上
● 登録部隊:約6,500隊以上
という、日本最大級の危機管理組織となっている。
■② 部隊は4つの“基本機能”から構成される
緊急消防援助隊は目的別に部隊が編成されている。
【1)消火部隊】
● ホース延長
● 一斉放水
● 大規模火災への対応
● 化学火災への対応
工場火災や広域延焼に対応する中心戦力。
【2)救助部隊(レスキュー)】
● 倒壊家屋からの救出
● 流水救助
● 車両事故救助
● 高所救助
● 重機を使った救助
災害時の“人命救助の中心”となる。
【3)救急部隊】
● 多数傷病者対応
● 避難所での救護
● 医療機関への搬送
● トリアージ実施
医療チームと連携しながら命をつなぐ。
【4)後方支援部隊(ロジスティクス)】
● 食料・水の供給
● 燃料・物資補給
● 車両整備
● 通信
● 野営拠点の設営
● 入浴支援
“現場を動かす裏方の心臓部”とも言える部隊。
■③ 災害特性に応じた“専門部隊”も存在する
緊急消防援助隊には、より特殊な任務を担う精鋭部隊もある。
【● 特別高度救助隊(スーパーレスキュー)】
都市部の高度救助を担う日本トップクラスのレスキュー。
【● 航空部隊(消防ヘリ)】
● 上空偵察
● 救助
● 消火
● 輸送
● 情報伝達
ヘリは広域災害の“目”であり“手”となる。
【● 水難救助部隊】
洪水・津波・冠水道路での救助専門。
【● 山岳救助部隊】
登山者救助・山津波・斜面崩壊対応。
【● NBC(化学・生物・放射線)対策部隊】
● 毒物
● 有害物質漏洩
● テロ事件
高度な知識と装備を持つ専門組織。
【● 指揮支援部隊】
● 情報収集
● 被害分析
● 指揮本部の設置・運用
● 無線通信の確保
災害時の「頭脳」となる部隊。
■④ “ブロック構成”で全国を8地域に分けて運用
緊急消防援助隊は、全国を8つのブロックに編成している。
● 北海道
● 東北
● 関東
● 北陸
● 中部
● 近畿
● 中国
● 四国
● 九州
ブロック単位で一体的に行動することで、
迅速な広域派遣と統一指揮が可能になっている。
■⑤ 派遣の中枢は“国(消防庁)”が担う
現地の消防ではなく、
“国が派遣の指揮を取る”ことが大きな特徴。
消防庁が、
● 情報収集
● 必要部隊の規模判断
● 全国への派遣指令
● 現地での統一指揮支援
を行うことで、
自治体の枠を超えた“全国消防組織”が成立する。
■まとめ|緊急消防援助隊は“全国消防の力を束ねる巨大組織”
この記事のポイント。
● 緊急消防援助隊は全国の消防本部から構成
● 消火・救助・救急・後方支援の4つが基本構成
● 災害種別に応じた専門部隊が多数存在
● 全国を8ブロックに分け機動的に派遣
● 消防庁が統一指揮を行う全国規模の部隊
結論:
元消防職員として断言します。 緊急消防援助隊は“日本中の消防が即座に一つになる”唯一無二の組織です。 巨大災害に対して全国で人命を守る仕組みこそ、日本の消防力の真の強さです。

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